2014年12月号

特別座談会

「創業の原点」が成長への突破口 未知への挑戦は続く

下條武男(日本コンピュータ・ダイナミクス名誉会長)、下條治(日本コンピュータ・ダイナミクス代表取締役社長)、清成忠男(事業構想大学院大学学長)

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2017年に創業50周年を迎える日本コンピュータ・ダイナミクス。ソフトウェアが産業として確立していない時代に創業した同社は、今再び「挑戦する文化」を見つめ直し、成長を目指す。

(左から)下條武男・日本コンピュータ・ダイナミクス名誉会長、 清成忠男・事業構想大学院大学学長、下條治・日本コンピュータ・ダイナミクス代表取締役社長

――下條名誉会長は、どのような経緯で日本コンピュータ・ダイナミクス(NCD)を創業されたのでしょうか。

下條名誉会長 NCDを創業したのは1967年でした。それまでの9年間は、プログラマーとして2つの企業でサラリーマンを経験しました。

最初に入ったのが、日本レミントン・ユニバック(現・日本ユニシス)です。理数系が得意ということで、コンピュータのシステム設計やプログラミングを担当しました。

1950年代後半ですから、真空管のコンピュータの時代です。コンピュータ関係は自分にすごく合った仕事で、どんどんのめり込んでいきました。実はコンピュータのことをよく知らずに会社に入ったのですが、運が良かったんだと思います。

――コンピュータとの出会いは偶然だったわけですが、そこに未来の可能性を感じ、起業されたのですね。

下條 武男(しもじょう たけお)日本コンピュータ・ダイナミクス名誉会長

下條名誉会長 そうです。出会いを大切にしているうちに、独立したという感じです。

日本レミントン・ユニバックの後に、大企業を中心に経営コンサルティングを行っている日本能率協会へ転職しました。日本能率協会の常務理事が先進的な考えの方で、アメリカで導入が進められていたコンピュータを取り入れようと考えていました。それで、コンピュータを教える役割の人が必要になり、私がスカウトされたのです。日本能率協会には5年半、お世話になりました。

サラリーマン時代の9年間で、コンピュータは非常に進化しました。しかし、ハードウェア中心の時代でソフトウェアを手掛ける会社はありませんでした。ハードウェアを納品するときに、無償でまずソフトウェア開発して、ハードウェアと一緒に納めるのが当然のことだったのです。

当時は、ソフトウェアだけではビジネスにならないというのが通説でした。しかし私は、日本能率協会という多様な情報が集まる場所で働いていたこともあり、今後、ソフトウェアの需要は大きく膨らみ、その分野で独立をすればやっていけるだろうという確信がありました。

前例のないビジネスに挑戦

――起業されてからは、どのようなことに苦労されましたか。

下條名誉会長 当時、ソフトウェア開発という業種は、一般にはまったく認知されていませんでした。

今も昔もベンチャーとしてやっていくにあたり苦労することは、2つあると思います。それは営業と資金繰りです。私がソフトウェア開発で起業して銀行へ相談に行っても、「そんなビジネスがあるの?」と、当初はまったく相手にされませんでした。最初は資本金100万円からのスタートで、当面の人件費があるだけだったのです。

また、営業について言えば、日本能率協会にいたころ、コンピュータに興味を持って導入されたクライアントがいくつかありました。日本能率協会と当社、クライアントの3社で話し合い、その業務を独立後も円満に引き継ぐことができました。そのため、独立当初から仕事を持つことができ、収益をあげることができました。起業にあたっては、そうした出会いを大切にすることで、道が開けることがあります。

――世の中に存在しないビジネスに挑戦するにあたって、どのようなお気持ちだったのですか。

下條名誉会長 まだ業種として存在していなかったからこそ、俄然やる気が湧いていましたね。私自身、仕事をしていてとても楽しかったし、誰もやっていないという状況に喜びを感じていました。

清成学長 1950年代というのは、今の若い人からすると想像もつかないような世界です。そのころ一般企業の事務で使われていたのは、複写業務をカーボンの手書きから解放したリコーの複写機「リコピー」や会計機ぐらいでした。当時は、現在ではソフトウェアが担っている機能をハードウェアで処理していた時代で、汎用機にソフトウェアを載せて使うというのは、まったくなかったのです。

そうした中で、下條名誉会長が起こした日本コンピュータ・ダイナミクスは、ソフトウェア会社として本当に草分け的な存在でした。

1971年の中央公論「特集・独立冒険事業家への道」が手元にあります。そこに下條名誉会長が参加した座談会が掲載されていまして、「ベンチャーをやる人には、教祖的な信念が絶対必要だと思う」との言葉が書かれています。堅実ながら、哲学という面でしっかりとした意思があっての経営だったのだと思います。

社会に必要とされることが大切

――信念として、心に留めていることはありますか。

下條名誉会長 会社として存在するからには、何らかの形で社会の役に立たなくてはならないと考えています。

もちろん、存続するために適正な利潤は必要ですが、営利だけを追求する法人であってはいけません。社会に必要とされるものを提供することが大切です。そういう会社でないと、存在価値はないと思っています。

清成学長 当時、専修大学の中村秀一郎先生とともに、革新的な中小企業を調査していましたが、企業に行くと、経営者が議論を仕掛けてくる。経営者のタイプが、それまでとは違ってきたことを感じました。

利益は、あくまで結果です。当時、我々が議論していたメンバーは、多かれ少なかれ同じ認識を持って活動していました。つまり最初から利益を追求して事業を展開するのではなく、社会に受け入れられて成功できたかどうか、利益はその結果の物差しとしてあるものです。

自ら現場を見て新事業を決断

――現在、NCDの事業は、IT関連と駐輪システム関連の2本柱です。駐輪システム事業への進出も、社会に必要という認識の下、決断されたのですか。

下條名誉会長 現在では大きな事業に育っている駐輪システム関連も、きっかけは出会いから始まったものでした。このシステムは、もともとは大分県のある会社が手掛けていたのですが、その会社に知り合いがおり、支援を頼まれたのです。

駐輪システム事業への進出にあたっては、社内で猛反対を受けました。しかし私は、駐輪システムに進出することを決断しました。

その理由の一つには、自分で何度も駐輪場に行き、出勤時間である朝7時~9時の状況を見て、「これはいける」と直感的に思ったことがあります。そのころの東京の駅には放置自転車がたくさんあり、大きなニーズがあると考えました。

――直感的に始めた事業が、今では大きな収益をもたらしています。成功した要因について、どうお考えですか。

清成 忠男(きよなり ただお)事業構想大学院大学学長

下條名誉会長 駐輪システムを手掛けている企業はいくつかありましたが、自転車を1台ずつ駐めて時間によって料金を精算するという仕組みは当社だけのものでした。

また、サポートのためにコールセンターも設置しました。そうしてソフトウェア会社として培った技術、ノウハウをうまく活かすことができた結果、シナジーを発揮できたと思います。

下條社長 現在は同じような方式で稼働する競合企業も出てきていますし、競争は激しくなってはきています。

その中でも最初に始めたという先行優位があることと、見回って点検するといったサービス面、徹底した社員教育による現場力が信頼につながっています。そうした総合的なサービス力が、強みになっています。

私は自分でも駐輪場の現場を経験したことがあります。リュックサックに工具を詰めて整備をし、ゴミがあったら拾っていく。1日7~8kmは歩きました。そうした中で現場のスタッフが、ちょっとした気遣いでお年寄りをお手伝いしたり、やりがいを持って仕事をしているのを目の当たりにしました。本当に彼らに支えられていると感動しました。

清成学長 「スマイリング・カーブ」というどこで付加価値を獲得するかを表す曲線があります(下図参照)。その理論では、曲線の両端にあたる川上・川下の部分、つまり構想・設計とサービスの部分の付加価値がもっとも高く、真ん中に位置する組立・製造の付加価値が最も小さい。現在では、ものづくりの強さだけでなく、消費接点に近いサービス力の強化が事業成功の大きな要因になっています。

システムの設計と、問題解決のためのサービスを強化し、サポートセンターを手掛けるNCDの駐輪システム事業の戦略は、きわめて理に適っていると言えます。

「第3のビジネス」の可能性

――将来に向けて、どういった成長戦略を描いているのですか。

下條社長 駐輪システム事業に関しては、現在、全国に約1300ヵ所あり、駐輪可能台数は約35万台です。あと2年半で創業50周年を迎えますので、それまでに50万台の設置を目標としています。

エコ社会に向けた社会的意識の高まりから、自転車を取り巻く都市環境の整備は、ますます進んでいきます。今後、駐輪場だけにとどまらず、レンタサイクルやシェアサイクルといった領域で事業を広げていきたいと考えています。

また、自転車関連にはITの強みを活かせる部分が、まだまだたくさんあります。一例として、自転車の音声ナビゲーションシステムの開発を進めています。駐輪システム関連には成長の余地が大きく残っており、将来的にはIT事業を超える売上げになると見ています。

IT事業に関しては、これまでのスタイルを固持していくだけでなく、自分たちが持っているリソースを活かし、新しい芽を探していきたい。パーキングで成功したようにITから離れたところから発想して、第3のビジネスを生み出すこともできると考えています。

――どのような方法で、新規事業を生み出していくのですか。

下條社長 私一人が考えるというよりも、いろんな人の意見に耳を傾けて取り組んでいきたいと考えています。社内ベンチャーという形で先行投資を行いながら、繰り返し挑戦していくのも方法の一つでしょう。

一昨年には、新しい事業アイデアを社内公募しました。30を超えるアイデアが集まり、新規事業のヒントになるアイデアもありました。こうしたことを通して、新たなビジネスについて考えたり提案したりといったことが頻繁になされるような文化をつくり上げていきます。

若手のチャレンジに期待

下條 治(しもじょう おさむ)日本コンピュータ・ダイナミクス代表取締役社長

――駐輪システム事業は当初、周囲から反対を受けた中で始まりました。新規事業には、将来を予測できない難しさもあります。

下條名誉会長 私は自分の目で駐輪場を見て将来性を感じ、進出を決断しましたが、結局は体験してみないとわからない部分がたくさんあります。そして「これだ」と思うものがあったとしても、うまくいくかどうか不安に思うことが必ずある。そこに勇気を出して賭けてみる。そうだと思ったことに対しては、どんどんやってもらいたいと思っています。

また、創業からずっと変えずにいる「日本コンピュータ・ダイナミクス」という社名には、コンピュータをダイナミックに利用すること(Dynamic Use of Computer)が必要不可欠であるとの思いが込められています。ダイナミクスとは、ダイナミック・ユースからの造語です。

コンピュータには、よりダイナミックな活用法があると思います。たとえばロボット産業など、まだまだコンピュータが進化する可能性は大きく残されています。これからの人たちが活躍できる領域は、たくさんあるのです。

――最後に、社員の方々、若い人たちへのメッセージをお願いします。

下條社長 現在、日本を代表する名だたる大企業が苦しんでいます。大企業病といった言葉もありますが、そうした中でベンチャーが持つチャレンジ精神が見直され、そこに立ち戻ろうという社会的な気運を感じます。

当社も、原点はベンチャー企業です。会社の中で自分の可能性に挑戦してみる。そうした思いで当社に入り、やりがいを持って働いてほしい。それが本人の幸せへとつながりますし、会社が発展する源にもなる。当社には、できることがたくさんあります。新しいことに挑戦する姿勢を持つ人に期待します。

日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社への

  1. 日本コンピュータ・ダイナミクス株式会社
  2. 事業内容
  3. ◆IT関連事業
  4. ・システムインテグレーション
  5. ・サービスインテグレーション
  6. ◆パーキング 関連事業(自転車駐輪場関連)
  7. ・EcoStation21®(時間貸し無人駐輪場管理事業)
  8. ・ECOPOOL®(月極め駐輪場管理事業)
  9. ・ecoport®(コミュニティサイクル事業)
  10. URL:http://www.ncd.co.jp/
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