「創業の原点」が成長への突破口 未知への挑戦は続く

2017年に創業50周年を迎える日本コンピュータ・ダイナミクス。ソフトウェアが産業として確立していない時代に創業した同社は、今再び「挑戦する文化」を見つめ直し、成長を目指す。

(左から)下條武男・日本コンピュータ・ダイナミクス名誉会長、 清成忠男・事業構想大学院大学学長、下條治・日本コンピュータ・ダイナミクス代表取締役社長

――下條名誉会長は、どのような経緯で日本コンピュータ・ダイナミクス(NCD)を創業されたのでしょうか。

下條名誉会長 NCDを創業したのは1967年でした。それまでの9年間は、プログラマーとして2つの企業でサラリーマンを経験しました。

最初に入ったのが、日本レミントン・ユニバック(現・日本ユニシス)です。理数系が得意ということで、コンピュータのシステム設計やプログラミングを担当しました。

1950年代後半ですから、真空管のコンピュータの時代です。コンピュータ関係は自分にすごく合った仕事で、どんどんのめり込んでいきました。実はコンピュータのことをよく知らずに会社に入ったのですが、運が良かったんだと思います。

――コンピュータとの出会いは偶然だったわけですが、そこに未来の可能性を感じ、起業されたのですね。

下條 武男(しもじょう たけお)日本コンピュータ・ダイナミクス名誉会長

下條名誉会長 そうです。出会いを大切にしているうちに、独立したという感じです。

日本レミントン・ユニバックの後に、大企業を中心に経営コンサルティングを行っている日本能率協会へ転職しました。日本能率協会の常務理事が先進的な考えの方で、アメリカで導入が進められていたコンピュータを取り入れようと考えていました。それで、コンピュータを教える役割の人が必要になり、私がスカウトされたのです。日本能率協会には5年半、お世話になりました。

サラリーマン時代の9年間で、コンピュータは非常に進化しました。しかし、ハードウェア中心の時代でソフトウェアを手掛ける会社はありませんでした。ハードウェアを納品するときに、無償でまずソフトウェア開発して、ハードウェアと一緒に納めるのが当然のことだったのです。

当時は、ソフトウェアだけではビジネスにならないというのが通説でした。しかし私は、日本能率協会という多様な情報が集まる場所で働いていたこともあり、今後、ソフトウェアの需要は大きく膨らみ、その分野で独立をすればやっていけるだろうという確信がありました。

前例のないビジネスに挑戦

――起業されてからは、どのようなことに苦労されましたか。

下條名誉会長 当時、ソフトウェア開発という業種は、一般にはまったく認知されていませんでした。

今も昔もベンチャーとしてやっていくにあたり苦労することは、2つあると思います。それは営業と資金繰りです。私がソフトウェア開発で起業して銀行へ相談に行っても、「そんなビジネスがあるの?」と、当初はまったく相手にされませんでした。最初は資本金100万円からのスタートで、当面の人件費があるだけだったのです。

また、営業について言えば、日本能率協会にいたころ、コンピュータに興味を持って導入されたクライアントがいくつかありました。日本能率協会と当社、クライアントの3社で話し合い、その業務を独立後も円満に引き継ぐことができました。そのため、独立当初から仕事を持つことができ、収益をあげることができました。起業にあたっては、そうした出会いを大切にすることで、道が開けることがあります。

――世の中に存在しないビジネスに挑戦するにあたって、どのようなお気持ちだったのですか。

下條名誉会長 まだ業種として存在していなかったからこそ、俄然やる気が湧いていましたね。私自身、仕事をしていてとても楽しかったし、誰もやっていないという状況に喜びを感じていました。

清成学長 1950年代というのは、今の若い人からすると想像もつかないような世界です。そのころ一般企業の事務で使われていたのは、複写業務をカーボンの手書きから解放したリコーの複写機「リコピー」や会計機ぐらいでした。当時は、現在ではソフトウェアが担っている機能をハードウェアで処理していた時代で、汎用機にソフトウェアを載せて使うというのは、まったくなかったのです。

そうした中で、下條名誉会長が起こした日本コンピュータ・ダイナミクスは、ソフトウェア会社として本当に草分け的な存在でした。

1971年の中央公論「特集・独立冒険事業家への道」が手元にあります。そこに下條名誉会長が参加した座談会が掲載されていまして、「ベンチャーをやる人には、教祖的な信念が絶対必要だと思う」との言葉が書かれています。堅実ながら、哲学という面でしっかりとした意思があっての経営だったのだと思います。

社会に必要とされることが大切

――信念として、心に留めていることはありますか。

下條名誉会長 会社として存在するからには、何らかの形で社会の役に立たなくてはならないと考えています。

もちろん、存続するために適正な利潤は必要ですが、営利だけを追求する法人であってはいけません。社会に必要とされるものを提供することが大切です。そういう会社でないと、存在価値はないと思っています。

清成学長 当時、専修大学の中村秀一郎先生とともに、革新的な中小企業を調査していましたが、企業に行くと、経営者が議論を仕掛けてくる。経営者のタイプが、それまでとは違ってきたことを感じました。

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