2014年11月号
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共創する人的ネットワーク

シリコンバレー流の最速経営 ジョブズに売却した日本人起業家 

田路則子(法政大学経営学部教授)

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新日鉄退職後に渡米し、シリコンバレーでSpruce Technologyを起業した曽我弘。開発したテクノロジーはのちにアップル社に売却され、MacBookのiDVDとなった。現地で創業メンバーを集め、後にわずか3日でジョブズの買収を決めたストーリーとは。

MacにインストールされているiDVDは、シリコンバレーで起業したSpruce Technologyによって開発され、アップル社に買収されたテクノロジーである。日本で生まれて育った曽我弘は55歳にして初めて米国に渡り、米国人を創業メンバーに迎えて成長させた。

日本人起業家の曽我弘米国にて創業メンバーを

退職した新日鉄のプロジェクトで1991年に米国へ渡り、MPEG2(映像と音声の規格)の Encoder装置の開発と販売を手伝った曽我は本社の指示でEidesign社を2年程で閉鎖しその会社を日本のカラオケ企業のエクシングに売却した。一時日本に戻りエクシングでエンコーダーの販売を行ったが、そこでソフトウエアと一体化されたハードウエアを望む顧客の声を耳にした。その後1996年に日本電子計算とジョイントベンチャーとしてSpruce Technologyを設立。それが次の製品のアイデアとなり、DVDタイトルを作成するオーサリングシステムを開発することとなった。

1996年、シード(立ち上げ資金)に、日本電子計算と曽我が出資し、日本電子計算は6割のシェア、曽我は4割のシェアを取った。その後すぐに、米国人2名が参画し、創業者は3人となった。日本電子計算は小額の追加の投資を申し出たが、これでは不足で追加資金を台湾のベンチャーキャピタルと日本のパイオニア等から追加投資のシリーズAとその後の投資のシリーズBで集めた。続く、シリーズCの段階で資金調達は頭打ちとなった。ITバブルが崩壊して、資金調達は厳しい環境になっていた。

このままでは、資金が枯渇してしまうため、やむなく売却の検討が始まった。アドビやマイクロソフトとの交渉を行ったが、成立したのはアップル社であった。その後、Mac OS向けに開発し直されて、今日のiDVDの礎となった。これを統括したのが、売却後にアップル社に移った創業メンバーのふたり、Greg Wallace とRainer Brodersenだった。

創業メンバーと成長

2人目の創業者は、開発担当取締役すなわちVP of EngineeringとなったGreg Wallace、3人目はCTO(最高技術責任者)となったRainer Brodersenである。WallaceとBrodersenは、務めていたゲーム開発企業が破綻した。そのときに、Wallaceの知人が曽我の立ち上げた会社の話を持ってきた。曽我と意気投合したWallace はしばらく考えていたが最終的に参画を決断し、MPEG関連の開発を統括しつつ、人材採用と管理を行うこととなった。

Brodersenは、次の会社でやり甲斐の無い仕事に悩んでいたところに、元同僚のWallaceから声をかけられた。Brodersenの役割は、ユーザー・インターフェースに配慮しながら、すべてのシステム設計を統括するCTOになった。

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