住宅・建築物の耐震化を促進
阪神・淡路大震災(1995年1月、発生)で亡くなった方の約9割が1981年以前の建築物の倒壊や家具の転倒によるものに集中していた。こうした背景から同年に制定された「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」が2013年11月25日に改正され、建築物の耐震化を促進施行している。
住宅や建築物の耐震化が重要
首都直下地震や南海トラフ巨大地震をはじめ日本全国で大地震発生が予測されており、その被害を最小限に食い止めるための方法の一つとして、住宅や建築物の耐震化が重要だ。
しかし、いまだに住宅で約1,000万戸、多くの人が利用する建築物も約8万棟の耐震性が不十分な状態であり(2008年時点)、これらの建物の耐震化が急務である。
2013年11月からは改正耐震改修促進法が施行され、病院や学校、ホテル、大型店舗といった不特定多数の人が利用する大規模建築物などに対する耐震診断の実施および結果報告が義務づけられた。また、国や地方公共団体では支援制度を設けており、住宅や建築物の耐震化を進めている。
住宅や多数の人が利用する建築物の耐震化
1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では、亡くなった方の約9割が建築物の倒壊や家具の転倒によるもので(グラフ(1))、新耐震基準(下記参照)を満たさない1981年以前の建築物に被害が集中していたことが明らかである。(グラフ(2))。
こうした背景から同年に制定された「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」が2013年11月25日に改正施行された。これに基づく国の基本方針において、住宅や多数の人が利用する建築物(※)の耐震化目標を2015年までに少なくとも9割と設定し、建築物の耐震化を促進している。※例えば、学校、体育館、病院、劇場、共同住宅、集会場、百貨店、事務所など
「耐震基準」とは
一定の強さの地震が起きても倒壊または損壊しない建築物が建てられるよう、建築基準法が定めている基準のこと。
■旧耐震基準(1981年5月31日まで)震度5強程度の地震でほとんど損傷しないことを検証
■新耐震基準(1981年6月1日以降)震度5強程度の地震でほとんど損傷しないことに加えて、震度6強~7に達する程度の地震で倒壊・崩壊しないことを検証
住宅を耐震化するには、住まいの耐震性能を評価してもらい、耐震改修が必要かどうかの判断(耐震診断)をすることが必要。特に旧耐震基準で建てられたものは、地震発生時における安全確保のために早めの耐震診断が求められる。
なお、マンション(区分所有建築物)の場合は、所有者が単独で意思決定が可能な戸建(木造)住宅とは異なり、管理組合などが中心となって所有者間の合意形成を図りながら耐震化を進めていく必要がある。
耐震診断で耐震改修の要否
建築士などの専門家が、建物の壁の強さ・バランス・接合部の状況や劣化状況などを調査・検査して耐震性を総合的に評価し、耐震改修の要否を判定する。
*耐震改修の概要
●戸建(木造)住宅/■基礎の補強・玉石基礎などの場合は、鉄筋コンクリート作りの布基礎に替え、これに土台をアンカーボルトで締め付ける。
■壁の補強・筋かいを入れる、構造用合板を張るなどして強い壁を増やす。腐ったり、シロアリに食われたりした部材を取替。土台や柱、筋かいなどの接合や、柱と梁(はり)の接合は金物などを使って堅固にする。■壁の配置・壁の量を増やし、かつ釣り合いをよく配置。
●マンション(区分所有建築物)/■耐震補強・耐震壁の増設、ブレースや外付けフレーム新設、柱や梁(はり)を補強する。
■制震補強・制震ダンパーなどの制震装置により建物に伝わる地震力を軽減させる。■免震補強/免震装置を基礎下や中間階に設置して地盤から伝わる地震力を大幅に軽減させる。
建築物の地震に対する安全性の向上を一層促進するため、耐震改修促進法が改正(2013年11月25日に施行)された。主な改正点は、大規模建築物などにかかる耐震診断と結果報告を義務化した。
「補助」「税制」「融資」制度で耐震化をサポート
耐震診断や耐震改修にかかる建物所有者などの費用負担を軽減し、住宅・建築物の耐震化を促進するため、国や地方公共団体(都道府県または市区町村)により「補助」「税制」「融資」に係る支援メニューがある。特に、耐震改修促進法の改正により耐震診断の義務づけ対象となる建築物に対しては、重点的かつ緊急的に耐震化を図るため、補助制度(耐震対策緊急促進事業)や税制上の優遇制度が新たに加わった。
■耐震診断、耐震改修に対する補助制度(住宅・建築物安全ストック形成事業)/住宅や建築物の最低限の安全性を確保するため、これらの耐震診断や耐震改修といった耐震性向上のための取組みを行う場合、その費用の一部を国と地方公共団体が補助する制度。
■耐震対策緊急促進事業/耐震改修促進法の改正により、耐震診断の義務づけ対象となる建築物に対して、前述の「住宅・建築物安全ストック形成事業」による支援に加えて、緊急的・重点的な支援を行う補助制度「耐震対策緊急促進事業」が創設された。
*この事業は平成27年度末までの時限措置(2015年度末までに着手したものが対象)で、地方公共団体における対象建築物への補助制度の整備状況によって申請や問い合わせの際の窓口が異なる。
税制上の優遇制度によって、一定条件を満たす場合、所得税や固定資産税などの控除・減額を受けることができる。また、融資制度も適用され、住宅の場合は、独立行政法人住宅金融支援機構による融資が、生活衛生関係営業を営む中小企業の場合、日本政策金融公庫による融資がうけられる場合がある。
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