2014年10月号

防災特集:災害を乗り越えるイノベーション

「逃げ地図」プロジェクト 「地図+時間情報」が生み出す可能性

月刊事業構想 編集部

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地形や勾配、混雑状況など地域固有の課題を勘案し、高齢者、障がい者の移動スピードも想定して、地図を作成。住民参加でつくり出される「新しい地図」が、まちづくりを変える。

住民の声も反映し、避難の所要時間ごとに道路を色分けした情報を提供する「逃げ地図」プロジェクト

東日本大震災後、携帯できる帰宅支援マップを持ち歩く人が増えるなど、地図の重要性が再認識されている。また、自治体によって、避難場所や避難ルートをまとめたハザードマップの公開が進むなど、災害に備えた情報提供も充実してきている。

しかし、そうした地図情報が、個々の住民にとって、本当に使いやすいものになっているかどうかは検討する必要がある。各地域には、地域固有のさまざまな課題がある。例えば、高齢者や障がい者の人数や移動スピード、道の幅、勾配、整備状況、時間帯による混雑度など、避難訓練や現地に行って調査しなければわからない情報も多い。そうした問題意識を持ち、住民主導の地図づくりを進めているのが「逃げ地図」プロジェクトだ。

必要な避難時間で道路を色分け

「逃げ地図」の特徴は、安全な場所を示すだけでなく、そこまでどれくらいの時間がかかるのかを明らかにし、色分けして表示していることだ。地図上に時間情報を付け加え、可視化したのである。

「逃げ地図」プロジェクトを進めているのは、日建設計有志による震災復興ボランティア部。メンバーは住民の声を聞き、ワークショップを繰り返しながら地図を共作する。

まず、地図上に過去の津波の履歴を重ね合わせて、浸水危険性のある地区を濃淡で表現。そして、過去の津波で浸水していない地域に通じる道と、過去の浸水ラインとの交点に避難目標ポイントを設定する。避難目標ポイントは自動的に決まるわけでなく、地元住民との合意形成が必要だ。

さらに、徒歩移動が非常に困難な高齢者の歩行速度を想定し、必要な避難時間ごとに道路を色分けする。最終的に、地域に潜在していた「津波浸水リスクの高い地域」、「逃げ遅れリスクの高い地域」を明らかにすることができるのである。

逃げ地図プロジェクトHP

新しいまちづくりの「土台」に

プロジェクトを進める中で、地域の性状を把握できる「逃げ地図」は、避難計画の策定だけでなく、まちづくりのベースマップにもなることがわかってきた。

例えば、被災地において高台の移転を検討する際、地図にリスクを重ね合わせて可視化すれば、移転が必要な地域・範囲の検討も、地元住民を交えて行いやすくなる。「逃げ地図」の作成を復興計画案につなげ、安全なまちづくりに活かすことができるのである。

プロジェクトでは、「逃げ地図2.0」として、数多くの試案の費用対効果をその場で算出し可視化するプログラムも提供。計画立案の精度を高める取り組みにも、力を注いでいる。テクノロジーの力が、まちづくりのプロセス、住民参加のあり方を大きく変えている。

参考文献 :逃げ地図プロジェクトHPはこちら

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