ラグビー日本代表 大躍進の理由をリーチ・マイケル主将に聞く
6月、テストマッチ10連勝を飾ったラグビーの日本代表は国際ラグビーボードが発表する世界ランキングで過去最高の10位に入った。世界的な名将であるエディ・ジョーンズ監督のもと、日本代表は急激に進化している。エディ監督がトップ10入りを掲げる来年のワールドカップに向けた代表のキーマン、新キャプテンのリーチ・マイケルにその進化の理由を尋ねた。
6月21日、東京の秩父宮ラグビー場。胸に桜のエンブレムを抱く赤のジャージの日本代表が、屈強な猛者が肩を並べる青のジャージのイタリアに真っ向勝負でスクラムを挑んだ。8人対8人、頭脳と力の根競べだ。この勝負、体格で劣る日本代表に軍配が上がった。勝負所で見事に青い波をせき止め、過去5試合で1勝もできなかったイタリア相手に、26対23で競り勝った。
この勝利をけん引したのが、リーチ・マイケル。ニュージーランド出身で15歳の時に来日し、日本在住11年。昨年7月に日本国籍を取得、今年4月に新キャプテンに任命された攻守の要だ。チャンスと見ればフォローに走り、守備になれば真っ先にピンチの芽を摘むフランカーで、強い身体と気持ちを持ち合わせた25歳のリーダーである。
ハードな練習で強みを作る
格上のイタリア戦での勝利の裏側について、リーチはこう振り返る。
「イタリア戦では、ラインアウトで自分たちのボールが22%しか取れませんでした。あの試合ではボールのスピードも出したところも良くなかった。それがすごく問題だったので、弱くなっているラインアウトにもっていかず、自分たちの強みを活かすためにスクラムにもっていこうと考えました。」
リーチがスクラムを「強み」と語るのには理由がある。
「15年のワールドカップでトップ10入りすること。19年の日本開催のワールドカップでトップ8に入ること」を目標に掲げ、セットプレーの強化を課題に挙げる日本代表のエディ・ジョーンズ監督は、2年前からスクラムの改革に特に力を入れてきた。2012年の秋の欧州遠征時から、スクラムでは世界最強とも称されるフランス代表で活躍したマルク・ダルマゾ氏をスポットコーチとして招聘。以降、フランス式のスクラムを習得すべく、トレーニングを積んできた。その成果として、体重や体格のハンデを感じさせないスクラムは日本代表の武器となったのだ。リーチの言葉が、イタリアの苛立ちを端的に表している。
「ラグビーは心理戦で、FWはスクラムとかモールで押されたすごく嫌なんです。ジャパンはスクラムが一番安定していて相手にプレッシャーをかけていたから、毎回、スクラム組むたびに相手の顔が元気じゃなかった(笑)」一方、イタリア戦では弱みになってしまったラインアウトも、日本が重点的に磨きをかけてきたセットプレーだ。やはり2年前から、日本代表のエディ監督が「世界最高のラインアウト理論を持っている」と評価する強豪イングランドの元キャプテン、スティーブ・ボーズウィック氏をスポットコーチに招き、練習を重ねてきた(今年6月1日より、正式に日本代表のコーチに就任)。その結果、体格で上回るアメリカやカナダとの試合でも安定してマイボールにできる技術を手にした。
そしてもうひとつ、日本代表には武器があった。
「ジャパンはフィットネスでも勝てるから、我慢して相手を走らせて、疲れた時に良いアタックすればいい。後半20分からが勝負の時間です。今まで8試合やって、前半に負けていても後半から逆転してきました」
フィットネスは、ハードかつ濃密なトレーニングで身に着けたものだ。
リーチが「今の日本代表の練習量はすごい」と苦笑いするトレーニングは、1日に4回行われる。朝5時、10時、15時に2時間ずつ。その後にウェイトトレーニングがある。
スケジュールを聞くだけで気が遠くなりそうだが、もちろん、ただ無闇に汗をかいているわけではない。
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