2014年9月号

未来の学び産業

言語版トキワ荘 「家中留学」で日常が学びの場 半数は外国人

Colish

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東京都千代田区に、住人の半数が外国人のシェアハウスがある。本気で語学力を高めたい人たちが共に生活しながら、お互いに学び合う「家中留学」。いわば言語版トキワ荘である。

学びと交流を促進するために、シェアハウス内で定期的にイベントを開催

コンセプト型シェアハウス事業を展開する『Colish(コリッシュ)』が、「家中留学」第一弾として2012年10月に立ち上げた東京・千代田区のシェアハウス「Lang Boat Kanda」。言語力を本気で高めたい人が集う学びの場だ。家中留学を発案した萩原悠大氏は、「日常の英会話ができても、人前でのプレゼンなど、もう一つ上のレベルを望む人は、たくさんいます。日本にいながら、一つ上のレベルの語学力を身に着ける場所をつくりたいと思いました」と話す。

家中留学は現在、多くの応募者を集める人気のシェアハウスとなっている。

入居には高いハードル

暮らしを一緒にすることで、自然と語学を学び合う

一緒に住むだけでなく、語学力のアップという明確な目的があるだけに、入居者には高い学習意欲とモチベーションが必要だ。入居に際しては面談・審査があり、ハードルは高い。資格試験の成績でいうとTOEFL iBTで80点、TOEICで860点くらいが入居に必要な言語力のボーダーライン。また、留学経験があるほうが望ましいという。

「外国人と一緒に住んだら楽しいかもという興味先行の方からの応募もありますが、本気でやる気のある人どうしが共同生活を送ってこそ意義がある。単にここに住めば、語学力が上がるわけではありません」(萩原氏)

入居者はお互いの国の文化や個性を尊重し合い、「生活の中で楽しく語学力を高めるにはどうしたら良いか」を、皆で話し合いながら決めていく。学習を促進する仕掛けの一つ「ランゲージ・ウィーク」は、決められた1週間、推奨された言語で話すことを心がけるというもの。暮らしを共にする中で生活そのものを学びの場にできる、これが家中留学の醍醐味だ。

シェアハウスでは長い時間を共有しなければならない。出身国の違いだけではなく、それぞれの家庭環境、生活環境が異なる中で、生活のルールをつくりあげていく過程の中には、多くの学びの機会が潜んでいる。

学びとシェアハウスの親和性

本棚にも、多様な言語の書籍が収められている

「学び」には2つの方法がある。一つは英会話教室のように先生がいて、一方が知識を提供する方法。もう一つが互いに学び合う方法だ。もちろん、家中留学は後者である。

コリッシュ代表の小原憲太郎氏は、「共同生活をしながら切磋琢磨し影響を与え合う点では、偉大な漫画家を多く生み出したトキワ荘、吉田松陰の松下村塾なども同じです。学びとシェアハウスは相性が良く、言語学習以外にも、さまざまな分野に応用できると思います」と語る。

すでにプログラミング言語を学び合うことをコンセプトにしたシェアハウスは存在する。

従来型のシェアハウスは、共同生活による生活コストの節約という側面も強かった。しかし、コリッシュが提案するコンセプト型シェアハウスは、「いくらで住むか」ではなく、「どのような人と、どんな風に住むか」を重視する。その一つのカタチが家中留学だ。

「運営に手間がかかるので、ビジネスとして考えたら、出張講座のような形で講師を呼んで教える場を提供したほうが効率的です。しかし、それが本当の学びにつながるかは疑問。新しい住まいの考え方を、ライフスタイルの一つとして広げていきたい」(小原代表)

海外には、コンセプト型のシェアハウスは存在しないという。多様な国の人たちが集まって、結果的に「言語を学び合う」環境になることはあるものの、最初からそれをコンセプトに掲げて募集・運営するのは、日本発なのである。

世界に広がる家中留学

日本は外国人にとって、なじみづらい側面もある国だ。住居や仕事の確保が難しく、英語の通じる場所も少ない。日本語を学ぶために来日しながら、日本人の友人をつくることができずに帰っていく外国人も多いと言われる。

家中留学には、「外国人に、日本人の感覚や文化に親しんでもらいたい」という強い思いも込められている。

「情熱を持って日本に来る外国人が住みやすい場所、現地の人と交流できる場所をつくりたい」(萩原氏)

家中留学は、日本に来た外国人が次の一歩を出すきっかけを作る場所でもあるのだ。

家中留学のコンセプトを、他の場所で展開する試みも始まっている。ハウス・マネージャーの紀野知成氏は、「国内だけでなく、カナダやフランス語圏などでも、現地の大学と組んで、日本の言語、文化を疑似体験できるシェアハウスをつくりたい」と語る。紀野氏はすでに、海外での立ち上げを目指して動き始めている。

日本人・外国人の双方にとって価値のある場をつくる。単にシェアハウスを広げるのではなく、コミュニティをベースに異文化の交流を促す。そこには、言語にとどまらない個人の成長機会があり、イノベーションの芽も潜んでいる。

(左から)萩原悠大(家中留学・発起人)、紀野知成(家中留学ハウス・マネージャー)、小原憲太郎(コリッシュ代表)

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