2014年9月号

未来の学び産業

「極限」の研修 無人島サバイバル 人間性を問われる挫折の連続

田口仁人、三木直人(グロースコンサルティング)

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企業研修は数あれど、無人島で自給自足のサバイバルに挑む研修は珍しいだろう。3泊4日のプログラムの中で、参加者は数多くの試練にさらされる。なぜ、今、そのような「学びの場」が求められているのか。

「生き残れ! そして脱出しろ!」

まるで映画のコピーのようなミッションを掲げる企業研修がある。グロースコンサルティングが手掛ける無人島サバイバル研修だ。

無人島研修というカテゴリーは以前から存在し、いくつかの企業が提供しているが、同社が手掛ける研修が特徴的なのは、食料や飲料水の調達、トイレや寝床の確保、火起こしなど「自給自足」を徹底しているところ。島根県隠岐諸島にある何もない無人島で、テントも支給せず、素潜りで漁をし、自分たちでいかだを作って島から脱出するという、まさにサバイバル能力が試される研修なのである。

そのぶん、研修を実現するには地元の理解や安全の確保に万全の準備が必要で、地権者や漁師との信頼関係を築き、研修中にはプロのダイバーを雇うなどかなりの手間とコストがかかる。3泊4日のプログラムで、1回・約800万円という価格設定になっている。

グロースコンサルティングの田口仁人氏はこの研修を始めた理由についてこう語る。

「きっかけは、自分が受けたい研修をつくりたいと思ったこと。多くの研修を受けてきて、もうお金を払って受けたいと思える研修がなかった。欧米では砂漠などで行うハードなサバイバル研修が数多くあります。日本でも、今までにない自然の中で生き抜くサバイバルアドベンチャー研修を実現したかった」

あえて理不尽な状況を設定

日本の企業研修の多くは座学型で、知識やスキルを高めることを意図したものがほとんどだ。

田口 仁人 グロースコンサルティング

一方、体験型研修は、実践的な課題をこなす中で、創意工夫やリーダーシップ、チームワークなど、幅広い能力の強化を図る。最近、日本でも体験型研修が増え始めており、無人島サバイバル研修はその「究極的な形」(田口氏)だという。

研修は、6人一組のチームになり、生活環境を整えるところからスタートする。ブルーシートと工具だけを渡されて寝床やトイレ、かまどなどを作る。夜はカップヌードルが支給されるが、ライターもやかんもない状況で火を起こし、湯を沸かすことができなければ、水に浸して食べるしかない。ちなみに、初日に自力で火を起こせたチームは皆無だそうだ。

2日目以降も、素潜りで漁を行ったり、海の底に沈められた宝箱を引き上げたりと、課題が続く。こういった挑戦を通して、参加者は「働くことは生きることと直結している」ことを実感することになる。

また、強制的にリーダーを交替させたり、サイコロの出た目で通貨として機能するコインを没収したりなど、あえて理不尽な状況をつくり出す。実社会の仕事でも、理不尽な状況があるのは当たり前。思い通りにいかない出来事に直面した時に、どう対応するかが問われるのだ。

人間性を問われる挫折の連続

最後にいかだを作って島を脱出するまでの4日間、参加者は挫折を経験し続ける。グロースコンサルティングの三木直人氏は、こう語る。

三木 直人 グロースコンサルティング

「参加者は『自分は何をするのか』、『何をしたいのか』、『何ができるのか』など、普段は目を背けていることにも対峙することになる。夜の振り返りの時間にはケンカが起きますし、泣き出す人も多い。でも、次第に感謝の気持ちを伝えたり、何でも自分でやるのではなく、みんなでやろうというふうに意識が変わっていきます」

無人島という極限に近い状況だからこそ露呈される人間性と能力の限界。そこで自分と対峙し、気づきを得ることで仲間の重要性、チームの必要性を体感するのだろう。

日本には、助けを求めることが苦手だったり、援助してもらうことに罪悪感を抱くような意識も根強く存在する。そういった日本人独特のマインドを理解せず、表面的にチームワークやコーチングを説いても根本的な解決にはならない。既存の企業研修が飽和している今、知識やスキルを教えるだけではなく、自ら気づいて学べる研修が求められているのだ。

田口氏によると、人材の流動性が高まる中で、今後は転職者に対する研修ニーズの増加も予想される。即戦力を獲得するだけでなく、そうした人をチームになじませるためにも、無人島研修のようなヒューマンスキルに特化した体験型の研修は、今後さらに需要が高まるだろう。

無人島サバイバル研修を導入した企業の一つ、マルハン。同社はインターンシップのプログラムとして活用し、学生が過酷な環境下で自己と向き合う場を提供。2013年には、合計24人の募集に対して約110倍となる2634人の応募を集めた。研修中には、火起こしや住居(寝床)の作成、素潜り漁、脱出用いかだ作りなどを自分たちの力で行う

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