地下水保全は「守り」から「攻め」へ

水循環基本法の制定も後押しとなり、地下水保全に動き出す自治体が増えている。しかし、ただ「守る」のではなく、地下水保全を企業誘致や地場産業・観光の育成につなげることが重要だと、水ジャーナリストの橋本淳司氏は指摘する。

地下水流域のシミュレーションモデル(地圏環境テクノロジー・オープン国土水循環モデル)。
地下水の広域管理が求められる中で、ITによる可視化も重要になっている。

「水リスク」で国内回帰の流れ

グローバル化という流れの中で、日本企業は中国や東南アジアを中心に生産拠点のシフトを進めてきました。しかし今後は、生産拠点の立地を決める上で、「水リスク」を意識せざるを得ない時代になるはずです。

橋本淳司 水ジャーナリスト、アクアスフィア代表

企業にとっての「水リスク」は、主に操業、財務、法的、評判という4つのリスクがあります(こちらの図2参照)。操業リスクを例にとると、2011年のタイ大洪水で日系企業の工場が操業停止となり、甚大な被害を受けことは記憶に新しいでしょう。

海外での水リスクが高まるにつれ、比較的水資源の豊富な国内に注目が集まり、生産拠点の国内回帰が見直されるようになりました。しかし、国内に回帰しても、企業が「水リスク」から解放されるわけではありません。なぜなら自治体は地下水の枯渇に対して危機感を強めており、将来的に水使用の規制を受ける可能性があるからです。

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