アイデアが強い市場を創る

2012年の固定価格買取制度の開始で、一気に拡大した再生可能エネルギー市場。市場には一服感も見えるのだが、「これからが本番」と意気込む企業も少なくない。今後の可能性について、立命館大学大学院客員教授の村沢義久氏に聞いた。

固定価格買取制度で、太陽光発電市場は急速に拡大した

調達価格は下がるが市場は安定的

村沢 義久
立命館大学大学院客員教授

3月7日に開催された経済産業省の調達価格等算定委員会では、2014年度の再生可能エネルギーの調達価格および調達期間について、委員長案が提示された。再生可能エネルギーの主役とも言える太陽光発電では、事業用の10kW以上を13年度から4円下げの32円/kWh、住宅用の10kW未満を1円下げの37円/kWhに引き下げる。買取期間(調達期間)は、13年度の前提を据え置き、10kW以上は20年、10kW未満は10年とする。

さらに新たな買取対象として、「洋上風力」と、既に設置済みの導水路を活用した「既存導水路活用中小水力」の区分を設ける方針だ。風力(洋上風力以外)、中小水力(既存導水路活用小水力以外)、地熱、バイオマスについては13年度の調達価格と調達期間を据え置く。

再生可能エネルギーや固定価格買取制度に詳しい、立命館大学大学院客員教授の村沢義久氏は提示案について次のように話す。「委員長案ですから、14年度の買収価格はほぼ確定したと言って良いでしょう。太陽光発電の10kW以上の調達価格は一時34円/kWhになると言われていましたが、設備利用率が想定の12%よりも高かったことから、32円/kWhに落ち着いたようです。32円は妥当な判断と言えますが、事業者にとっては少し残念でしょうね」

事業用太陽光発電の調達価格は、制度開始時から8円下がることになる。2014年度以降の再生可能エネルギー市場は縮小していくのだろうか。

「まず、2014年については心配ありません。36円と40円の土地在庫は潤沢にあり、ノウハウを持つ事業者はこれらを活用する考えです。皮肉にも、32円という価格が決まっても、取得されることはあってもすぐに出番は回って来ないでしょう」

ただし、「人によっては、太陽光発電はあと1年しかもたない、という意見もあります」と村沢氏。その論拠は40円、36円の土地在庫が切れることに加え、2015年3月末でグリーン投資減税の即時(一括)償却制度が期限を迎える点にある。

11年6月に施行されたグリーン投資減税にはいくつかメリットがあるが、特に大きいのがこの即時償却制度。法人や個人(青色申告者)を対象に、太陽光発電などの設備の取得価格の全額を、即時一括して償却できる特別措置だ。即時償却額は損金として計上でき、その分だけ所得税や地方税が軽減されるので、節税対策として多くの利用者があった。この特別措置がなくなれば、設備取得のマインドは大きく下がるだろう。

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