2014年3月号

東京五輪の活かし方

集客の切り札 カジノの可能性

永濱利廣(第一生命経済研究所 主席エコノミスト)

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外国人が訪問しやすい環境の整備は、外国企業の誘致にもつながる。オリンピックを契機に、日本を「ビジネスをしやすい」国に改革することで、持続的な成長が可能になる。リピーターの獲得に向けては、カジノも有効な手段だ。

カジノの建設が検討されている東京・お台場。永濱氏は、「カジノは、外国人観光客のリピーターを増やすのに有効な手段」と語る

オリンピックの開催国は必ず景気の拡大や株価・通貨の上昇を経験しており、2020年の東京オリンピックも例外ではありません。

その経済効果は、東京都の試算によると約3兆円弱です。しかしその大半は競技場の建設や周辺施設の整備で、開催に向けて行われる道路や鉄道などのインフラ整備は含まれていません。

幅広い分野でインフラ整備

先進国で開催された過去のオリンピックを見ると、開催までの7年間は、それ以前と比べてGDPを年平均0.3%ポイント押し上げる効果があります。これを日本に当てはめると、累計で10.5兆円になります。

ただし、これはあくまで付加価値ベースの金額で、生産誘発額に換算すれば21兆円程度になると試算できます。なかでも、インフラ整備と観光客の増加は大きな経済効果があります。

たとえば、環状道路の整備率を見ると過去の開催国のソウル、北京、ロンドンはともに100%ですが、慢性的な渋滞を引き起こす東京の環状道路は59%と大幅に遅れています。

オリンピック関連施設の建設や改修工事などに4000億円が見込まれていますが、それ以外の周辺の再開発や道路網、鉄道、空港などといった交通インフラにも整備が必要です。また民間では、ホテルや商業施設の建設や改修、さらにオリンピック終了後の再開発にも設備投資が行われるでしょう。

建設労働者の不足が深刻化

しかし、こうした再開発にも問題はあります。ハードルになるのが、建設労働者不足です。2002年の日韓ワールドカップの頃と比べて建設労働者が120万人以上減少しており、圧倒的な人手不足です。

このままでは需給がひっ迫し、人件費を中心に建設コストの上昇が懸念されます。特にオリンピックと関係ない地域は、建設・資材費の高騰を販売価格に転嫁できず、収益を圧迫する要因になりかねません。

今後も被災地の復興や地方の老朽インフラで建設ラッシュが続きます。現在のような状況で、オリンピックに向けた東京の整備が十分に行えるのか疑問も湧いてきます。少子化で建設労働者を増やすのは構造的に困難でしょう。そこで関心を呼びそうなのが、外国人労働者の受け入れです。 

ただ、外国人労働者の受け入れるにしても、文化的にどこまで日本人が容認できるのかわかりません。たとえば政府が受け入れている外国人労働者は高度人材で、移民の受け入れは視野に入っていません。オリンピックを契機に移民受け入れに風穴が開く可能性もあります。

注意しなければならないのが、開催後の経済の反動減です。2次利用できない施設は、負の遺産となることも考えられます。需要の先食いと実需の減少によって、開催後のGDPは0.6%押し下げられることが予測され、その対策が求められます。

インフラ整備の名を借りて、無駄なものを作りすぎると財政の健全化にマイナスに働くことも考えられます。投資先は集中と選択で選ばなければなりません。

キーワードは「国際化」

建設の他に経済効果として期待できるのが、外国人観光客の増加です。

政府は2020年に2013年比2倍の2000万人の誘致を目指しています。実現のためには、外国人が訪問しやすい環境を整える必要があります。

空港を見ても、国際線の発着便の少なさに加えて旅客機の離着陸料も高い。道路の案内標識はローマ字のためわかりづらく、交通機関のアナウンスも英語だけです。また、ショッピングを楽しみたくても言葉が通じない店舗が多い。

こうした課題の解決は、実は外国企業の誘致にもつながります。日本に進出希望の企業にアンケート調査を行うと、ビジネス環境に求める改善点と観光客の言う不満は共通しています。「世界で最もビジネスをしやすい国をつくる」のがアベノミクスの目標の一つですから、オリンピックを契機に変えていくべきです。

主要各国のGDPに占める観光産業の比率は10%、これに対して日本は5%とまだ半分です。これから成長する素地が十分にあるわけですが、その魅力ある観光地づくりの一例として考えられるのがカジノです。

カジノは、外国人観光客のリピーターを増やすのに有効な手段です。実際、シンガポールやマカオは、カジノで外国人観光客を急増させました。東京のお台場や沖縄など、すでにいくつかの地域で検討しており、カジノ特区として具体化するかもしれません。

また、訪日増加のターゲットとして力を入れたい国はインドです。購買力を持つ中間層が日本の総人口より多いものの、観光客として訪れる人はまだ少ない。たとえば、インド映画のロケ地として売り込むのも一つの方法かもしれません。スイスはロケ地の誘致で知名度を大きく上げ、インド人観光客が多数訪れるようになりました。観光客を増やすには、まず日本に興味を持ってもらうことから始めるべきです。

オリンピック開催を控え、今後成長が見込めそうな分野をキーワードにすると「国際化」です。また、食や農産物などにもビジネスチャンスがあり、各地域は情報発信の仕組みづくりに重点を置くべきです。オリンピック開催後も反動減の少ない分野を狙い、今から市場開拓を進めるべきです。

永濱利廣(ながはま としひろ)
第一生命経済研究所 主席エコノミスト
1971年生まれ。95年早稲田大学理工学部を卒業、2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。95年第一生命保険に入社、98年より日本経済研究センター出向。00年より第一生命経済研究所経済調査部副主任研究員、04年より同主任エコノミストを経て、08年4月より現職。著書に『男性不況』、『図解90分でわかる!日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門』、『図解90分でわる!日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門』など。
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