「新しい日本」発展の契機に

「財界でもスポーツを通した地域の活性化という考え方が共有されはじめている」──日本体育協会会長の張富士夫氏(トヨタ自動車名誉会長)に、これからの企業とスポーツの関わり方への展望を聞いた。

スポーツの努力のプロセスをビジネスに活かす

張富士夫 日本体育協会会長

企業がチームをもち、その試合を応援しに行くことで従業員の気持ちが一つになるというのは、企業にとってもメリットになることだと思います。外国では地域のクラブチームが中心で、企業がスポーツで連帯感をもつというのはあまり聞いたことがありませんが、日本では実業団チームのトップアスリートが現役を引退した後もビジネスマンとして仕事でも活躍するなど、企業とスポーツは独自の関わりをもってきました。

個人的な経験で言うと、私は大学時代は剣道部でしたから「勉強ばっかりやっている人間より、体を動かしている人間のほうが会社で活躍できるぞ」と言われ、その通り稽古ばかりやっていました(笑)。

競技力を高めるための努力の過程では、技だけでなく、いろいろなことを学びます。企業が成長していくためにはそういう人財が必要です。「弁は立つが体が動かない」人間ばかりになると、会社はうまくいきません。一人の人間としても、頭だけでなく体を使って学ぶということは重要なことだと考えています。

スポーツを介した地域とのつながりを

企業と地域とのつながりはグローバル化時代において、ますます重要になっています。トヨタ自動車は、愛知県の豊田市という地方都市で地域の人に支えられながらやってきた歴史があります。そして、1980年代からは世界に出ていったわけですが、そこでわかったことは、まず、地域の理解を得るということが一番大事だということです。自動車のように裾野の広いサプライチェーンで成り立つ製造業は、地域に溶け込めるかどうかがビジネスを成功させるうえで非常に重要です。

その意味で、地域活性化に資するスポーツの支援は欠かせない社会貢献活動です。企業の施設を地域の人に開放して使ってもらったり、競技大会を支援したり、地域の理解を得て絆をつくっていくためにスポーツは非常に大切なのです。

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