口コミグルメサイトの成長曲線
ソーシャルメディアが発達した現代において、グロースハックの切り口としてソーシャルメディア活用は欠かせない。ここにおいて、匿名か、実名か、というのは一つの論点となる。
Text by 梅木雄平(The Startup代表取締役)
2005年からサービスを開始し、国内トップの口コミグルメサイトとして独走する食べログと2011年にサービスを開始し急成長を遂げる新興口コミグルメサイトRetty。同じ口コミグルメサイトでもユーザー獲得の手法は全く異なる。カカクコム取締役食べログ・新規事業担当村上敦浩氏とRetty代表取締役武田和也氏にそれぞれのグロースハックについて聞いた。
ブロガーと地道に関係構築、
レビュアーを集めた食べログ
村上 初期ユーザーはどんなやり方で獲得していったんですか?
武田 2011年6月にサービスを開始した当時はTwitterでしかログインできないサービスでした。ユーザーがTwitterやFacebookを通して口コミを流してくれることでソーシャルメディアでの拡散を狙いました。ソーシャルメディアを通した友達紹介や招待機能も実装していました。
村上 なるほど。会員数やアクティブ数はどの位になっているんでしょうか。
武田 現在は口コミ数60万、口コミ掲載された店舗数が16万店舗です。現在はログインしなくても口コミは閲覧可能にしていて、UUが100万を突破したところです。食べログがどのように立ち上げたのかも、気になります。
村上 2005年に立ち上げましたが口コミグルメサイトは先行サービスが2つありました。『askU』が40万件、ライブドアグルメの前身となった『東京グルメ』が10万件の口コミを持っていました。正直、最初は敵うわけがないと思っていました。
武田 でも、勝算を見出されていったんですよね?
村上 2つありました。まず両サイトともシステムが弱かった。アクセスが集中するであろう夕方になるとサイトが重くなりました。口コミ数が増えるとシステムのデータベースの設計をしっかりやらないと、サイトの動きが重くなります。次に両サイトともテキストしかなく掲示板のような感じでした。グルメなので写真があったほうが良いだろうと、写真に重きを置いたUI設計を心掛けました。
武田 2005年といえば日本でブログが流行りだした頃でしたね。食べログの立ち上げ時にはブロガーによく声を掛けていたという話も聞いたことがあります。
村上 ログでレストランについて記事を書く人は多く、askU、東京グルメもありましたが、個人ブログがものすごい勢いで盛り上がってきた時期でした。最初はブロガーに焦点を絞り、トラックバックで簡単に投稿できるツールを作ったり、ブログパーツを作ったり、ブロガーが食べログに参加してもらう工夫をしました。
武田 口コミを投稿するユーザーが、どれくらいサイト内に存在するとサービスとして良いという指標はありますか?
村上 1,000人くらいで食べログ上位店は網羅できます。でも飲食店は70万店以上はあるので、数万人くらいのレビュアーがいないと大方の店舗はカバーできないでしょう。こうした取り組みで、ブロガーだけでなく、徐々にaskUからも食べログにレビュアーがシフトしていき、当時トップを独走していたaskUのレビューの増加件数が激減していき、最終的にはパタッと止まりました。
武田 食べログ、恐るべしですね。
村上 他には改善要望の掲示板を作りました。かなりの数の要望が寄せられ、要望が上がったら数営業日中に直していきました。当時はレビュアーさん達にも我々といっしょに食べログを作っている感覚がありました。
武田 ユーザーの意見を大切にして、サービスの運用に活かすというのはRettyでもやっていることですね。
「新宿 カフェ」で1位。
SEOで猛追するRetty
武田 ユーザーを獲得していく上で最も効いた施策は何ですか?
村上 SEOですね。店舗のデータベースをしっかり作ったのが効きました。当時(編注・2000年代中ごろ)は日本中の店舗を網羅するグルメサイトは1つもありませんでした。最初は日本中の雑誌や書籍を買いあさり、内製でお店を登録していきましたが、今ではユーザーが自発的に月に5,000店舗ほどの新しい店のデータベースを追加してくれています。
武田 やはりSEOですか。RettyもSEOはけっこう頑張っています。たとえば「新宿 カフェ」では1位を取っています。
村上 そうそう。RettyのSEOは当社内でも話題になっています。うかうかしてはいられないなと。再びSEOで勝てるように「新宿 カフェ」についてもそのワードで行き着く先がコンテンツページになるよう、作成を急いでいます。こちらとしては、文章量などを含めたコンテンツ量で圧倒できるのが強み。SEOではそうそう譲るわけにはいきません(笑)。
武田 (笑)。Rettyは実名制であることもあり、お店に関する良いレビューを書くユーザーが多く、全ての店舗の口コミを網羅しようと思っているわけではありません。SEO主体のサービスではないので、コンテンツ量という土俵での勝負は考えていません。レビューについては、件数が多かったり長ければ長いほど良いとお考えですか?
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