日本の会議・研修文化を変革する

「最高の人材」×「最高の環境」=「最高の成果」を求めることこそ、時代が求める勝ち組企業への早道、である。  約1兆円とも言われる日本のコンファレンス・ビジネスの市場規模だが、その実態はまだまだ未成熟。そこに、欧米型のコンファレンス・ビジネスが日本で成長する余地が存在している。

「失われた20年」において、一部の勝ち組企業と大多数の負け組企業に両極分化した要因については、これまで、多くの識者によって論じられてきた。

そういう中にあって、意外なまでに触れられていないポイントがある。

日本におけるコンファレンス・ビジネスの第一人者である、田中 慎吾氏

それは、「会議・研修の戦略化レベルが、経営の成否を握る」という点だ。

そこで、今回は、1980年代から一貫して、日本の産業界の会議・研修の変革に取り組んできた田中慎吾さん(66)にお話を伺った。

田中さんは、日本におけるコンファレンス・ビジネスの第一人者として、現在、プリンスホテル・グループと契約。同グループのホテル群を主要な舞台にして、グローバル企業を中心に、コンファレンス(会議・研修)の企画・運営を請負い、その多くがリピーターになるなど、高い評価を得ている。

非生産的な日本型コンファレンス

「通常、300人以下の会議や研修をコンファレンス(Conference)と呼びます。

いわゆるコンベンション(Convention)は、それ以上の規模のものを指し、『モノ』を対象にしているという点で、『人』を対象にするコンファレンスとは異なります」

田中さんによれば、日本の大多数の企業のコンファレンスは、旧態依然とした非生産的なものだという。

その最大の要因は、「個々の会議や研修の所期の目的を達するために、それぞれどんな環境が必要か?」という視点が最初から欠けていることにある。

たとえば、日常業務が繁忙を極めている時、社内の会議室に集められて、新商品や新事業の企画を検討するなどということがある。

しかし、頭の中は「もうすぐ月末だけどノルマは達成できるかな」とか「顧客からのクレーム、どう対応しよう」といった心配でいっぱい。携帯電話はひっきりなしに鳴り、気分はイライラするばかり... おまけに、隣の会議室からは、成績不振の部下を叱り飛ばす幹部の怒号が轟き、ますます気が滅入ってくる。

そんな状態の中で、「顧客の心をときめかすような夢に満ちたプランはないか?」などと言われても、それはムリだ。

結局、ああでもない、こうでもないとダラダラとした非生産的な時間が流れ、ろくなプランも出ないまま解散。

みんな、「やれやれ」と一目散に日常業務へと戻ってゆく。

研修だって同様。特に、泊りがけの集合研修のために自社の研修センターに行くよう命じられて、ウキウキした気分になる人はどれだけいるだろうか?「それでなくても忙しいのに、平日を2日も3日もつぶされるのは困る」というのが表向きの理由だが、本音を言えば、「まるで魅力やセンスのない建物、刑務所のような息苦しい生活リズム、パッとしない食事。ありがちで退屈な研修内容...そんなものにつきあわされるなんてウンザリ」といったところ。

従来の日本企業には、どうすれば会議や研修の生産性を上げることができるかという発想は基本的になかったと言ってよい。「やる気」と「根性」さえあれば、いかなる環境下でも会議や研修は成立するというのが、大多数の経営者の考え方だったからだ。

しかし、このような価値観を持って、現在、グローバル社会における「勝ち組」になり得ている企業は、果たしてどれだけあるだろうか?

コンファレンス・ビジネスとは何か?

生産性の高いコンファレンスを行う企業には、コンファレンスのプロフェッショナルが存在する。いわゆる「ミーティングプランナー」であり、その会議や研修の所期の目的達成をミッションとし、それを最も効果的・効率的に実現し得る会場の選定や手配などを行う。

コンファレンスコーディネーターはコンファレンスのための施設利用に関わる情報を一元的に掌握・管理する。成果の上がる会議・研修を実現する施設選択をもたらしてくれる

その一方において、研修センターやホテルなどの施設側にも、同じミッションを有するプロフェッショナルが必要となる。依頼のあったコンファレンスに関して、最適なプログラムを構築すると共に、そのコンファレンス実施時に、現場のオペレーションをサポートする「コンファレンスコーディネーター」である。

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