なぜ財務が重要なのか

ベンチャービジネスは「危険」がいっぱいの「冒険」的な事業。財務のマネジメントは、この「危険」の度合いを軽減するための「保険」となるはず。事業構想において欠かすことのできないベンチャー財務の要諦を5回連載で解説する。

日米で異なる「財務」の認識

筆者は以前、ベンチャー企業の集積地であるカリフォルニア州シリコンバレーで、インキュベーターと呼ばれる起業家育成機関に対してヒアリング調査を行ったことがある。

その中で、「育成機関で教育を受けた起業家とそうでない起業家との間で、売上高や利益といった企業業績に顕著な差があるのか」と聞いてみた。

多くのインキュベーターから返ってきた回答は「業績はマチマチであり一概には言えない。しかし、確実に言えることは、インキュベーターで育った企業はキャッシュ・マネジメントを中心とした財務の重要性を認識しているから、倒産はしていないはずだ」という印象的なものだった。

起業家たちを教育・支援していく過程で、倒産しないだけの財務の知識やノウハウを伝えてきているのだという、彼らの自負のようなものが垣間見られた。

このように、アメリカでは起業家や潜在的起業家に対して、財務の重要性が説かれている。一方わが国では事業シーズの探索や革新的な研究開発、そしてマーケティング活動などについては十分な指導が行われているものの、財務への関心は相対的に低いと言っていい。これではまるで「倒産予備軍」を世に送り出しているようなものだとは言い過ぎだろうか。

革新性と生産性

企業は市場(=お客)のニーズを的確に捉えてそれに対応することで、製品やサービスが売れて事業規模は拡大する。市場という企業の「外部」に対応することで成長・拡大を志向する革新的な経営は、目立ちやすくカッコ良いし、何よりもベンチャー企業らしい前向きな感じがする。

しかし、市場のニーズに合致したモノを開発したり提供し続けるためには、おカネが必要となる。おカネは無尽蔵に生まれるものではないから、限られた資金で最大の成果をもたらすことが求められる。

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