セールストークの神髄は「物語」

セールストークの真髄は、消費者が自分で納得して商品を買いたくなることにある。セールスマンが必死に説得しても、消費者が納得していなければ後日キャンセルになるであろう。そのセールストークの真髄を理解する手掛かりが「物語」である。

物語というのは、主人公が「何かを手に入れる」という筋書きで構成される。グレマスの行為項分析(下図参照)によれば、物語は6つのアクタント(行為項)からなる。①主人公、②対象、③送り手、④受け手、⑤補助者、⑥反対者である。

第1に、主人公は②の対象を手に入れたいという「欠如」の状態があることで、物語の筋書きはスタートする。

その対象とは欲望の対象であり、物語にはそもそも「欲望」が埋め込まれているのである(欲望の関係)。

第2に、欲望の対象は主人公みずから作り出せない。対象には送り手が存在し、その対象の受け手は多くの場合主人公である(伝達の関係)。第3に、主人公を助ける補助者がおり、一方、主人公の行く手を阻む反対者がいる(闘争の関係)。

物語に埋め込まれた欲望

人は、物語に共感しそれを受け入れることで、物語に埋め込まれた欲望を自己の欲望として受け入れてしまう。

たとえば、ある主人公がダイエットに成功し理想のボディを手に入れたというエピソードがある。理想のボディは欲望の対象である(欲望の関係)。その対象の送り手はダイエット食品、受け手は主人公である(伝達の関係)。

そして、補助者はダイエット食品のセールスマン、反対者はジャンクフードである(闘争の関係)。

つまり、理想のボディを手に入れたくても、ジャンクフードが行く手を阻んでいるのであるから、セールスマンがあなた(消費者)を助けに来たという設定である。セールスマンが来たことで、あなたは理想のボディを手に入れることができ、ハッピーエンドを迎えることができるという筋書きとなる。

この筋書きを描けるかがポイントである。

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