2020年 食の未来図

現在、人口減少によって、日本の食のマーケットは縮小傾向が続く。しかし、政府の施策と企業努力によって、食ビジネスを成長産業に変えることは可能だ。食の近未来を展望し、変化をチャンスに変えるための戦略を考察する。

今後、食に対する関心・無関心の二極化は、より一層進むことになる
Photo by lolay,nyenyec!erved by mauitimeweekly

食ビジネスは農林漁業、食品工業、関連流通業、飲食業などで構成される。

市場規模は90年代の後半の115兆円をピークに減少を続け、2010年には約94兆円となっている。上記の主要4分野全てにおいてマイナス傾向が続いており、食ビジネスは「川上」の農業から、「川下」の小売・外食に至るまで、バリューチェーンの全てのパーツが縮小している。

その要因はいくつか考えられるが、最も大きな要因は国内の人口減少や高齢化による需要の量的縮小である。食ビジネスは人口動態の影響をストレートに受けやすい産業である。今後も人口減少・高齢化は進むため、国内需要は基本的に縮小傾向が続くはずである。

目標実現のスピード感が不足

こうした状況の中、政府は12年3月に策定した「食品産業の将来ビジョン」の中で、市場規模を2020年に120兆円にまでV字回復することを官民共通の目標として掲げた。

ビジョンでは「農林漁業成長産業化」、「イノベーション等による新たな需要・市場の構築」、「輸出の促進」といった主要テーマごとに工程表が示されている。これらのテーマ自体はいずれも納得性のあるものだが、その実現性については疑わしいと言わざるを得ない。

たとえば弱体化が進む農業を「ビジネス」として活性化させるためには、法人参入による農業の大規模化・効率化が不可欠である。しかしながら先頃発表されたアベノミクスの「3本目の矢」である成長戦略の中でも、法人の参入要件の規制緩和については明確にされなかった。そのような従来型の手順・スピード感では、今後わずか7年間で120兆円を達成することなどは不可能だろう。

衰退産業から成長産業に転換

今後の食ビジネスの成長戦略としては、以下のような方向性が考えられる。

(1)縮小する国内市場の中で競争力を高めて自社のシェアを高める

(2)消費者のニーズ、ウォンツに対応した付加価値の高い新たな国内市場を開拓する

(3)人口増加、経済成長が見込まれる中国などのアジア諸国へ輸出(現地生産含む)を拡大する

戦略遂行のためには、「農業への法人参入促進」のような行政の腹をくくった環境整備が不可欠になる。

また食ビジネス各事業者においては、「川上から川下までを連携させた高効率・高付加価値型バリューチェーンの構築」、「多様なニーズに応えるためのマーケティング力・技術力の強化」などが求められる。

これらの戦略遂行により2020年の食ビジネスは、衰退産業から成長産業へ脱皮することが十分可能であると考える。

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