多様性の中で個人を確立 「異文化力」は実践で磨かれる

外資系金融機関、ハーバード大学、そして現職の東京大学理事と、世界の第一線で活躍し続ける江川雅子氏。グローバル・リーダーに求められる資質とは何か。自らの経験を通じて感じた、グローバルで活躍するための秘訣を聞いた。

──グローバルな環境に身を置くことの重要性について、どう考えられていますか。

江川 私は国際的に活躍する仕事に就きたくて、高校生のときに1年間、カリフォルニアに交換留学をしました。言葉はもちろん、考え方や文化の違う人たちと向き合いコミュニケーションをとるという、とても貴重な実践の場になりました。

なかでも刺激を受けたのが、自分の頭で考えることの大切さです。日本では女性は控えめであることが求められますが、海外ではレストランで何を注文するかといった小さなことから、政治や経済の話まで、あらゆるものに「自分の意見」が求められます。

企業も外資系は日本企業とは異なります。責任の範囲や意思決定の方法が明確で、スピード感ある経営が特徴の外資系企業には、実に多様な人材がいます。

私が最初に働いたニューヨークの外資系金融機関にも、国、言葉、文化、考え方などの違うさまざまなバックグラウンドの人がいましたが、彼らと仕事を進めるためには常に自分の頭で考えて意見を伝えるよう心がけなければなりません。自分と異なる文化のなかでも柔軟性を持ち、冷静にはっきり意見を発信する力が求められます。私はこれを「異文化力」と呼んでいます。

外国人と接する実践の場が重要

──コミュニケーション能力については、どう捉えていますか。

江川 異文化力が、まったく異なる環境で平常心を保つ力だとすれば、コミュニケーション能力は、異なるバックグラウンドの人と心を通じ合うマインドセットのようなものです。

海外で人と交流するときは、英語の上手な人が外国人と仲良くなるとは限りません。英語はツールの一つであって、積極的にコミュニケーションをとる姿勢が重要になります。

英語のスキルを高めることは大切です。日本の英語教育についてはいろいろな意見がありますが、インターネット全盛の現代、英語を話す人の大半はブロークン・イングリッシュで発音や文法の間違いなど気にしていません。日本人は恥ずかしがりやなうえに、正しく話さなければと思ってしまい、せっかくの機会を失っているのかもしれません。何よりも「話す」という実践の場が重要です。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り50%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。