「放し飼い」の権限移譲で組織を再生せよ

硬直化した組織を変えるには、どうすればいいのか。グーグル日本法人の元社長・村上憲郎氏は、日本企業の人材活用、組織のあり方に警鐘を鳴らし、改革に向けた方向性を提示する。

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I T業界は消費者ニーズを巧みにつかみ、製造業などと比べて隆盛を極めているように見えるが、決して恵まれた環境にあるわけではない。それでもあえて違いを挙げるなら、若い人たちが引っ張る業界なので企業内に世代間抗争が生まれにくいことだろう。

 こう言っては失礼かもしれないが、どの業界でも会社を動かしているのは企業トップをはじめとする年配の管理職だ。だから若い社員のすることが、危なそうに見えて心配で仕方がないのだろう。こうしたことが背景になり若い社員の発想は潰されてしまい、「提案してもどうせダメだろう」という諦めを生んで、組織を硬直化させてしまうのである。

グーグルは「放し飼い」 最低限のルールで十分

とはいえ、イノベーティブな考えやクリエイティブな発想を積極的に受け入れ手放しで任してしまうと、当然ながら経営リスクも生まれる。

 そこで社員には「会社の目的は何か」というミッションステートメントに基づき最低限のルールを設定してあげればいい。

そして好きにさせるのだ。何をやってもいいが、「収支だけは合わせる」というシンプルなスタイルなら誰にもわかりやすい。

 例えば、こんなケースもある。

かつて権限を与えた社員が判断に行き詰まり、「どうしましょう」と助言を求めてきたことがある。そこで私は、「君以上に詳しい人はいないのだから、君以外の誰にもわからない」と答えた。無責任のようにも思える回答だが、権限の移譲とはこういうことだ。結果的に本人は「自分で決めるしかない」と自覚しモチベーションを向上させた。

 組織からヒエラルキー構造を取り除いてフラット化させ、業務に最低限のルールさえ決めれば、自分の責任で働くようになる。これが社員の能力を引き出すことにつながる。

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