最終消費者の存在がブレークスルーのカギに

閉じた枠組みで考えていては、新たなビジネスを生み出すことは難しい。なぜ自社の商品が社会に存在しているのか、粘り強く考えを掘り下げ、多様なステークホルダーとの関係の中で、「本当の課題」を見つけ出す必要がある。

今までと同じやり方では通用しない、そう考える経営トップは多い。超マンモス企業から従業員10名の中小企業に至るまで事業規模にかかわらず同じ悩みを抱えている。ことに製造業は現状に限界を感じており、従来の方法が通じにくくなったことを強く意識している。

しかし、社内会議だけで考えるクローズドイノベーションで優れたアイデアは生まれない。思考を一新するには、どのようなマインドセットが必要なのか。

付加価値は本質的な価値ではない

富田欣和 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科非常勤講師

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科非常勤講師の富田欣和氏は、「協創や協働などにより外部の力も借りつつ、対象の持つ『本質的な価値』とは何かを考えることが大切です」と指摘する。

富田氏によると、この思考のプロセスで陥りがちなのが『付加価値』を本質的な価値と間違えてしまうことだという。

意識改革に成功したある貼り箱メーカーを例に挙げて富田氏は説明する。

「初めは低コストで高品質な箱を本質的価値だと考えていました。これまでは、それを評価されてきたのだから当然でしょう。ところが、これは本質的価値ではなく箱の付加価値に注目しているだけなのです」(富田氏) 既存の商品・組織の領域だけで考えると、どうしても付加価値から抜け出せない。商品が社会でなぜ役立っているのか、それはなぜなのか、より掘り下げて考えてみることが必要だ。

こうした既存組織の弊害を打破するためにその貼り箱メーカーで行ったのが、社員だけでなくパート従業員も加えたブレインストーミングだ。パートを加えることで多様な意見を聞き、本質的価値を考えるための視野を広げた。

次に実際に箱が使われている現場のフィールドワークを行った。イノベーションを成功させるポイントの一つは、ステークホルダーとの協創だ。

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