「勘定合って銭足らず」を避ける

会計は経営の羅針盤。事業を成功に導くには意思決定会計としてのビジネス会計の活用が欠かせない。

本稿は6回にわたり、社長はじめリーダー層が身に付けておくべき損益分岐点、投資採算、企業価値、資金繰りなどの要点を分かりやすく実践的に解説する。

1 設備投資による資金の不足

利益が出ているのに資金が足りなくなることは「勘定合って銭足らず」と呼ばれる。この結果、倒産に至ってしまうのが「黒字倒産」。会計に疎い経営者が陥りやすい罠だ。では「勘定合って銭足らず」の原因は何か? A社が300万円の利益を上げたとしよう。税金は40%として120万円。これを300万円の利益から支払う。ところがA社は900万円の設備を借金で購入していた。借入金は3年返済とすると年間の返済額は300万円。しかし、この300万円を返済してしまうと税金120万円を払ことが出来ない。このように、利益を超えて設備をした場合が「勘定合って銭足らず」の原因の第1である。

もう少し詳しく見ると、A社の税引前利益300万円は設備の減価償却費を控除した後の金額である。設備の耐用年数が10年として、年間の減価償却費は90万円。減価償却費は計算上の数値なので90万円の現金を支払った訳ではない。すなわち費用ではあるが資金は出ていない。

従ってA社は390万円の資金が生まれていたのである。ここから120万円の税金を支払うと残額は270万円となり、やはり300万円の借入金返済は出来ない。

利益がそのまま資金として残るのではなく、税引後利益(税金を支払った後の利益に)減価償却費を加えた額が資金(キャッシュフロー)として残る額なのである。

資金(キャッシュフロー) = 税引後利益 + 減価償却費

2 運転資本の増加による資金不足

「勘定合って銭足らず」のもう一つの原因が「運転資本の増加」である。運転資本とは「営業活動のために使われているカネ」。

営業活動をするには通常、商品在庫が必要となる。また掛売りであれば売掛金が発生する。この2つは「資金が出て行った」と解釈できる。他方、仕入活動に伴う買掛金も発生する。買掛金は支払いを猶予されている訳だから「資金が入ってきた」と解釈できる。この差が運転資本で、プラスの金額が「出て行った資金」なのである。

運転資本 = 売掛金 + 商品 - 買掛金

A社の第1期末貸借対照表から運転資本を計算してみると表1の通り400となる。この400は資金が「出て行った」ことを意味する。

A社の運転資本 = 売掛金 + 商品 - 買掛金 = 500 + 200 - 300 = 400

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り52%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全文読むことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。