キャリアが広げる「世界基準」への道

NTTドコモ、KDDIは、ともにインキュベーション・プログラムを展開し、ファンドによる出資でベンチャー支援に力を注いでいる。スマホ時代になり、市場環境が激しく変化する中で、その狙いはどこにあるのか。

これまでベンチャー支援といえば金融系のベンチャーキャピタルが中心となっていたが、この数年、企業系のベンチャーキャピタルが増えている。

11年には通信キャリアのKDDI、ソーシャルゲームのGREE(グリー)とKlab(ケイラボ)の2社が、また12年にはフジ・メディア・ホールディングス、そして13年にはNTTドコモが続いている。

各社とも、起業家向けの支援プログラムとファンドを設立しての本格的な参入だ。背景には、グローバルマーケットでのスマートフォンの目覚しい普及がある。インターネットサービスの将来はスマートデバイスが鍵を握るとされ、スタートアップにはスピード感が求められる。こうした中で、NTTドコモとKDDIは、投資のみならずベンチャーと協業する新しいスタイルを打ち出した。

NTTドコモ 「500 Startups」と提携世界を目指す志を後押し

NTTドコモは「ドコモ・イノベーションビレッジ」を今春よりスタートし、起業家支援を開始した。第1期となる6チームは124件の公募から選ばれ、5~9月までのスケジュールでサービスの開発を目指す。

支援メニューは、ドコモとの協業や営業支援、APIの提供、メンター(助言者)やチューター(協力者)によるアドバイス、開発助成金200万円や共同オフィススペースの提供などさまざまだ。

特徴は、グローバル展開を目指すベンチャーの育成を目指していることだ。海外のインキュベーターとして、世界的に著名な「500 Startups」と提携するなど、海外とのつながりを強化している。

また、イノベーションビレッジの参加企業に提供される共同オフィススペースには、日本進出を狙う米国のベンチャーにも利用を促し、グローバル企業と接する場を提供する。

秋元 信行 ドコモ・イノベーションベンチャーズ 取締役副社長

ドコモ・イノベーションベンチャーズ取締役副社長の秋元信行氏は、「化学反応を起こす機会を数多く提供し、参加チームに『海外は近い』と感じてもらいたい。そして、アジアや米国へと拡大するグローバルスタンダードなサービスをつくり出していきたい」と可能性を語る。

一方、起業家にとっての一番の魅力は、ドコモとの協業や営業支援、チューターの存在にある。メンターは外部の12名の専門家だが、チューターは同社の20~30代の社員で、チームごとに最低1人がついて経営的・技術的な相談から、同社の人的ネットワークを活用した取引先の紹介まで一体となって支援する。優れたビジネスモデルには、「ドコモ・イノベーションファンド」(運用総額100億円)からの出資も検討される。

ファンドを立ち上げた理由について、秋元氏はこう語る。「ドコモは大きな会社なので、意思決定に時間がかかるところがあります。優れたベンチャーに時機を逸せず投資するためには、スピード感のある意思決定が不可欠です。そのためには、本体からの直接出資ではなく、ファンドからの出資が一番機動的です」

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