2013年4月号

東北の新興プロジェクト

「実感する復興」へ手応え

奥山恵美子(仙台市市長)

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仙台市奥山恵美子市長インタビュー

これまで地道に培ってきたものが、非常時を支えた。長く単なる支援ではなく、事業や人材への投資という意味での支援へと繋がった。全国からの期待に応えるべく、復興と新興の両輪をまわす。地域再生を一段と加速させるとともに、東北の復興をけん引する施策の展開で、震災復興計画に掲げた「新次元の防災・環境都市」の具現化を急ぐ。

東日本大震災が100万都市・仙台から奪ったものは確かに大きかった。しかし、それまでにずっと、小さいながらもこつこつと続けて来たことの価値が、奪われたものの回復を後押ししてくれた。そのことが、仙台の新たな誇りになると思います」(奥山恵美子市長)。

観光都市・仙台にとって、震災は、長く苦しい「被災期間」の始まりでもあった。「震災直後の2011年4月には、仙台市全体における土産品の売上高が例年の9割減まで落ち込みました。観光地や宿泊施設、飲食店、物販店。あらゆる観光産業が悲鳴を上げていました」。08年に、「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」を行い、仙台が観光地としての自覚を新たにした矢先の出来事でもあった。「それまで仙台は、観光に対し奥手というか受動的でした。しかし、あのキャンペーンをきっかけに、意気込みが画期的に変わった。自分たちが東北の玄関口となって、東北全体の観光を盛り上げるんだ、という自覚が芽生えたんですね。この自覚は、震災が起こっても消えてはいませんでした。ゴールデンウィークの頃には、〝被害の大きさを正しく知ってもらうためにも、観光客を呼び戻さなくては〟という動きが出てきました」。

震災で価値を取り戻した商店街

観光地はもとより震災時に大きな活躍をみせたのが中心部商店街だ。流通がストップし、大型店や大型チェーン店が軒並みシャッターを下ろしたままの状態の中で、店主たちは店頭に立ち、手持ちの商品を格安で販売したり、知人の安否を伝えたりしていた。自然発生的に生まれた手作りの掲示板・伝言板には、開いている店舗や炊き出し、充電が可能な場所、尋ね人などの情報がびっしりと書き込まれ、重宝されていた。

「ある意味、ものを売っていたというよりは挨拶をしていただけ、という話も聞きました。商店街は、ただモノの売買をするだけの場所ではない。人と人との交流の場所である、ということを再認識させられました。現在では一番町四丁目につくった『仙台なびっく』(震災前に立ち上げた商店街の活性化プロジェクト、実現は震災後)や中央通の『東北ろっけんパーク』とともに、中央商店街と被災した地方の商店街とが連携しながら一緒に復興と新興を進めていくための重要な拠点となっています。震災前、市街地の大型ショッピングモールなどに押されていた中央商店街の存在意義を改めて確認いたしました」。

復興特区活用へ

復興には、長い時間が必要だ。従来以上の経済力、街の活気、市民の力も欠かせない。そこで重要となってくるのが、東日本大震災復興特別区域制度を活用し、新たな産業やビジネスモデルを興していくことだ。「新たに宮城に力や知恵を貸してくれる、注いでくれる方々との連携の輪が大きく広がっています。いまのビジネスは、どんなにニッチなものでもオリジナリティが大切。単純に〝いいもの〟ならば、それこそ全国にあふれている。その中で主張できるものを、どうやって発掘し、〝見える化〟していくか。それもまた、外部からの視点が大事です」。

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昨年3月には、農と食のフロンティア推進特区が認定。区域内の農業振興や雇用機会の確保に寄与する事業を行う法人や個人事業者が税制上の特例措置の適用を受けられる。機械や装置、建物を取得した場合の、特別償却または税額控除、指定後5年間の法人税無税、県税・市税の課税免除などだ。認定後、1年足らずで10件以上の申し込みがある。今後はさらに新たな復興特区の活用も視野に入れる。

また産業政策では、東北への波及効果も踏まえた総合経済対策「仙台経済ステップアッププラン」を継続。2015年度に開業する地下鉄東西線の沿線開発を行う「フル活用プラン」も打ち出している。

海外からの反応もある。仙台市が進めてきた男女共同参画事業の存続に、共同参画の先進国であるノルウェーが動き、「女性リーダーシップ基金」が設立された。「仙台だけでなく、東北一円の女性の皆さんに活用していただくのが、私ども、そして支援くださったノルウェー王国の望み。岩手や福島の男女共同参画センターと連携していきます。震災復興の中で見えた、市民の力の蓄積。そして海外からの評価。新たに生まれた誇りが、復興への大きな活力となってきています」。

奥山恵美子(仙台市市長)
1951年秋田県生まれ。東北大学経済学部卒。1975年仙台市役所入庁、01年せんだいメディアテーク館長、03年市民局次長、05年仙台市教育長、07年仙台市副市長。09年仙台市長に就任。
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