梅酒事業で5年間に売上25倍

地元への「こだわり」が生んだ大躍進

中野BC代表取締役・副社長中野幸治氏

中野幸治氏。本物志向の顧客ニーズに即応した酒作りへの 転換を訴え、伝統の手仕込みを復活。国内外の評価を高 め、人気を復活させた

「地域興し」が日本全国で叫ばれ、様々な挑戦が行なわれているが、長期不況下、地域興しどころか自社の生存で精一杯というケースも少なくない。そういう中にあって、稀有な成功例として注目を集める企業がある。和歌山県海南市に本社を置く中野BCである。

同社は、地元名産「紀州南高梅」を使った梅酒の製造販売を事業の柱にしつつ、梅エキスなどの機能性食品、日本酒、焼酎、みりんの製造販売を行う。社名のBCは、バイオケミカル・クリエーションの略であり、高い研究開発能力をベースに、和歌山県ならではの素材を用いて、今までになかった独創的な製品を創出しようという強い思いが込められている。資本金は8千万円、年間売上約33億円。従業員はパートを入れて男91名、女100名。就職活動中の大学生にも人気で、地方中堅企業ながら、昨年は東大・京大を含め全国から3000人以上がエントリーした。

現社長で2代目に当たる中野幸生さん(73)は、日本経団連・和歌山県経営者協会・会長を歴任するなど地元の経済振興のために東奔西走の日々を送っており、現場の指揮の大半は副社長で長男の中野幸治さん(37)が執っている。

環境変化を読んで経営革新断行

高い情報感度を実地研修で磨いた女性マーケティング部。梅酒25種を開発し、売上急成長の原動力となった

同社は1932年の創業以来、醤油を製造販売していたが、創業者の中野利生氏の念願かなって1958年には日本酒の蔵元となり、「長久」は、和歌山を代表する清酒として関西圏を中心に長く親しまれた。

時は流れ、中野幸治さんが法政大学大学院修士課程(機械工学専攻)を卒業後、宝酒造勤務、中小企業大学校を経て中野BCに課長職で入社したのは2005年のこと。時あたかも、日本酒市場の衰退が続き、全国で蔵元の廃業・転業が続出していた。

彼は、低迷の原因が紙パック商品に代表される機械制大量生産による低価格競争にあると見ていた。この渦に呑まれた蔵元は次々に廃業に追い込まれている。中野BCもまた機械生産を主体にしている。中野さんは「本物志向の顧客ニーズに即応した酒作りに転換しないと危ない」と、幸生社長に直訴し伝統の手仕込みを復活。その比率を徐々に高めていった。

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