デジタルのトラウマ

正か偽、YESかNO、1か0、善か悪、有か無といった単純化した議論は分かりやすい。この分かりやすい論理は公理化され、形式化されてブール代数という数学で体系化され、木目細かく論理展開されてデジタル技術に活用された。そして、市場が駆動するさまざまな応用分野に水平展開されて、現代社会を支えている。デジタル技術によってデジタル画像は肉眼の解像度に近づきつつあり、4K解像度のディスプレイやプロジェクタが期待を集める。誰もが安価なデジタルカメラによって高品質でコピーや編集が手軽に扱える画像データを大量に生産出来るようになったのは最近のことである。感光材料を使うアナログカメラでは不可能であった手ブレや逆光も自動的に補正され、プロ並みにそこそこの品質の写真が撮れるようになった。コマンド1つで印刷し、電子メールに添付して世界中に送ることもできる。そんな手軽さは偏にデジタル技術のおかげであり、デジタル技術を下支えする高度な材料技術のおかげである。東日本大震災と同じ年、同じ月の3月31日の正午に60年間続いたアナログ放送は停波し、格段に品質が好く視聴者としての参加も簡便になった地上デジタル放送を誰もが楽しんでいる。

パリ工芸博物館の展示品写真集から

このような素晴らしい価値を創出するデジタルという概念はつながりの無い離散的な数値データで構成される。私達は時間や空間、線や面やかたちについて切れ目のない連続する量、つまりデジタルに対置されるアナログで考える。そしてアナログデータの数値化にあたっては量子化という分割操作を行い、離散的な数値で表現する。人々は、このアナログという連続的な考え方と離散的なデジタルという考え方との関係を、科学を通して少しずつ理解するようになった。時代はフランス革命の頃に遡る。

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