第1回 企業はいくらの利益を上げたらよいか
会計は経営の羅針盤。事業を成功に導くには意思決定会計としてのビジネス会計の活用が欠かせない。本稿は6回にわたり、社長はじめリーダー層が身に付けておくべき損益分岐点、投資採算、企業価値、資金繰りなどの要点を分かりやすく実践的に解説する。
1 必要利益の考え方
企業が稼ぐべき利益の計算は、①総資本に対する比率、売上高に対する比率、③一人当たり利益額、④借入返済など資金の支出額などが多く使われる。これらのうち「企業は資本を調達し、これを運用して利益を獲得する活動」と考えれば、調達している資本に対するコスト分を最低限の利益として獲得すべしと考える総資本利益率を用いるのが最も論理的であろう。
総資本に対して何%の利益が必要かについては、当該企業の資本コスト(図1)を参考にする。具体的には負債と純資産の構成比に、それぞれの資本コスト率を乗じたWACC(Weighted Average Cost of Capital)で計算するのだが、株主資本のコストの計算に市場全体の期待収益率を表すリスクプレミアムや、市場全体の動きに対する個別株式の動きを表す係数であるβ値を用いるなど計算が煩雑であり、とりわけ市場株価が形成されない非公開企業には向いていない。そこで資本コストの概念を使ったより実践的な方法を紹介しよう。
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