タテとヨコの鉄道インフラが充実

九州新幹線と観光列車で地域活性化に成功したJR九州。さらに、ななつ星の運行や駅ビル開発などのまちづくりで九州の活性化に挑んでいる。

1987年にJR九州が誕生した当時、九州内の移動手段シェアではわずか鉄道は5%だった。そこで、JR九州専務取締役鉄道事業本部長の青柳俊彦氏は、「効率よく人を運ぶことに重きを置くのではなく、乗る楽しさを味わえる列車で集客を図る戦略をたてた」と振り返る。

JR九州は、工業デザイナーの水戸岡鋭治氏によるお洒落でユニークなデザインの列車が全国的に知られている。博多と大分県の由布院を結ぶ特急列車「ゆふいんの森」は、ハイデッカー構造の車両が人気となり、JR九州が展開する観光列車の先駆けとなった。

タテの新幹線、ヨコの観光列車

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クルーズトレイン「ななつ星in九州」国内外の富裕層がターゲット。乗務するクルーは一流ホテルのマ ネージャー経験者など、社内外から優秀な人材が集った。ななつ星には乗れないけれど、ななつ星が走 る九州に行ってみたいと思わせるのも作戦

2011年3月に全線開業した九州新幹線は、大きな影響をもたらした。九州7県の2011年度観光消費額の推計は2兆4900億円で前年比約11%の大幅増加(九州経済調査協会調べ)。新幹線自体の利用は、開通から1年間で博多~熊本間が896.1万人(前年同期の在来線特急比37%増)、熊本~鹿児島中央間は514.2万人(同65%増)。とくに快調なのが新大阪直通の「さくら」と「みずほ」で、乗車率は博多~熊本間59%、熊本~鹿児島中央間で40%と、九州内の発着を含めた平均値(42%/38%)よりも高い結果となっている。

しかし、九州新幹線が通ったのは、九州の「縦軸」。横軸となる長崎・佐賀・大分・宮崎といった新幹線沿線外の地域には鉄道の深いパイプはない。そこで、縦軸の新幹線に対し、到着駅からの横軸として観光列車を位置づけ、新幹線効果を九州全体に波及させようとしている。

観光列車は現在9本。乗車率は平均61%と高い。「指宿のたまて箱」(鹿児島中央~指宿)、「SL人吉」(熊本~人吉)、「海幸山幸」(宮崎~南郷)など、80%を超える超人気列車もある。

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