若い世代の力を都市の力にする戦略

カワイイ区のプロモーションで、大きな注目を集めた福岡市。しかし、その背景には、第3次産業中心の福岡の産業構造と、観光客のメインターゲットが20~30代の女性という背景がある。若い世代の力を街の力に反映させる市長の戦略を追った。

―基本施策として重視している福岡市の施策は。

福岡はアジアの交流拠点として発展してきた2000年の歴史があります。昔からアジアのゲートウェイであった福岡市にとって、この物流機能を高めていくことが非常に重要なのです。例えば、箱崎埠頭とJRの貨物列車への積み込み駅との距離は1.7km。コンテナをトラックに積んだまま運ぶRORO船は航空機と比べて物流コスト1/4、環境負荷1/40で、航空機並みの日数で上海との物流が可能です。これは全国でも福岡だけで実現できることです。

同時に、博多港の機能向上、地下鉄の整備、そして発着数が上限に迫っている福岡空港への対応など、人流の強化も重視しています。

第3次産業が9割 商業と観光の街・福岡

―福岡の街の暮らしやすさも人流を築くには重要ですね。

これからの街の価値基準は、規模ではなく質。暮らしやすさは人と環境と都市の調和がいかに取れているかで決まります。この点で、福岡は世界NO.1といってもよいでしょう。

近隣を山と海に囲まれ、豊かな資源の恵みがあり、コンパクトに都市機能が集積している。1級河川に恵まれないだけに、水道事業において海水の淡水化技術を取り入れています。市民の節水意識も高く、1人当たりの水の使用量は大阪市の半分です。このような持続可能な成長モデルを備えた街はそう多くないのです。これは、コンパクトシティだからこそ実現可能なことでもあります。

こうした福岡の素晴らしさを内外に発信していきたいと考えています。

―情報発信には特に力を割いていらっしゃいます。

まず、福岡は生産額・従業者数ベースで市内経済の9割が第3次産業が占め、観光によって潤う街だという認識を高めたいと考えています。音楽や演劇、プロスポーツ、美術などエンターテイメントが楽しめ、買い物がしやすく、歴史的文化財も数多い。しかしこの福岡の素晴らしさについての市民の皆さんの認識はまだまだだと思います。「福岡は見て回るところがあまりない」という意識なのです。そのため、教育委員会が担当していた文化財や遺跡などを観光にも活かしていくために、経済観光文化局を立ち上げ観光にも活かせる体制を作りました。様々な取組を進め、観光の視点には随分気づいていただけたように感じています。

カワイイ区のターゲットは20~30代女性観光客

―カワイイ区もその一環ですね。

まず観光客の誘致戦略を進めなければなりません。海外については、来年からシンガポールとの直行便が毎日運航になり、ヨーロッパとの直行便も就航します。直行便で結ばれた都市を中心にプロモーションを展開します。国内については、関東地域がターゲットです。日本で最も人口が多い関東からの観光客は全体の7%に過ぎませんが、実はこのほとんどが20~30代の女性です。この層に対するプロモーションとして打ち出したのがカワイイ区なのです。

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