第2次ベンチャーブーム到来

IT技術の進化による起業コストの低下で、今、次々とベンチャーが生まれている。若手起業家は何を思い、何を目指すのか。インキュベーターの孫泰蔵氏に聞いた。

起業家の数が少ないことで知られる日本。総務省が2010年に出した情報通信白書によると、09年における主要20ヵ国の起業家の割合は最下位だった。

しかし、ここ1、2年で大きく状況が変わってきているようだ。起業家・投資家で、スタートアップの創業・成長の支援も行っている孫泰蔵氏は、「5年前と比較しても、十数年前のインターネットが出てきた頃のベンチャーブームと比較しても、確実に増えています」と語る。

バンド感覚の起業増加 起業熱は学生にも浸透

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学生時代に起業するなどインターネットベンチャーの草分け的存在として知られる孫泰蔵氏

孫氏によれば、1つの理由はIT分野の技術の進化にある。サービスやコンテンツの表現手段として主流になったアプリは数人で作ることができるし、クラウドサービスやSNSを使えば、ビジネスをするのに大きな資金やオフィスは必要ない。こういう現状が、コスト的にも心理的にも起業のハードルを下げた。もう1つ、ベンチャーが事業を売却して桁違いの収入を得る事例が増えていることも理由にあると見る。

「最近はバンドを作るような感覚で起業をする人が増えていますね。ギターとドラムとベースとボーカルが集ってバンドを組もうとなるような感覚で、アイデアがあれば仲間で集って起業しようという話になる。また、社員15人のインスタグラムがフェイスブックに1千億円で買収されたように、当たった時にすごく利益が大きいということを人々は目にしています。それで、ちょっとやってみようかと思える環境ができました。マネタイズモデルがなかなかできなくても、ユーザーをたくさん集められるコンテンツは魅力的なので、大企業に買収してもらえます。そういったM&Aが、今後は増えていくでしょう」

バンド感覚で気軽に起業する。そんな意識の変化は、学生にも波及しているようだ。日本で学生ベンチャーは珍しい存在だったが、最近では起業を志す学生も増えているという。

「これまで日本の優秀な学生は大企業に就職していましたが、それでは面白くないかもしれないという疑問や、もう安泰とは言えない状況もあって、やりたいことができたらやってしまおうという感じがしますね。

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あと、アメリカも同じだという話を聞きましたが、困っている人たちのために役立つ何かを作りたいというような、お金を稼ぐだけではないところに価値を見出している若者が増えている気がします」

社会的な価値を求める若手起業家の増加は、まさに今の時代を反映しているのだろう。

環境整備が遅れる日本 求められる連携

一方で、孫氏はアップルやフェイスブックのようなイノベーションを起こす企業が日本から生まれるには、まだ環境が整っていないと見る。

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