未踏のマーケットを狙うベンチャーの戦略とビジョン

日本でも定期購入サービスを提供する企業が、続々と誕生している。果たして、彼らはどこに商機を見出しているのか。各社の戦略をとおして、日本における定期購入マーケットの将来を展望する。

1 キュレーターがライフスタイルを提案 - HATCH -
富裕層をターゲットにモノではなくストーリーを売る

「HATCH(ハッチ)」はその名のとおり、毎月8日に商品が届く定期購入サービスだ。運営会社は、lap&co.。同社の三浦有人社長は、ファッションのECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥディの出身である。

定期購入を新たに始める企業は増えているが、異分野からの参入も多い。そうした中で、ECサイトの運営ノウハウを知ることは、大きな強みになる。三浦社長は、HATCHを始めた理由をこう語る。

「この1~2年で、ECのトレンドがだいぶ変わってきたことを現場で感じてきました。ウェブサイトを開くだけでは、お客様は集まりません。モノが動くのは、セールやポイント特典、キャンペーンなど付随的な価値が提供されるときになっています。そうした中で、お客様のライフスタイルに入り込むことで、本質的な価値が提供できると考えました」

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HATCHの特徴は、キュレーターが厳選したアイテムが届くこと。ドライフルーツやCD、インテリアやヘアケア商品など、その道の専門家が商品をセレクトしている。

そして、モノを届けるだけでなく、その商品を楽しめるように、ライフスタイルの提案にも力を入れている。

「HATCHが売っているのは、ストーリーです。お客様が自分なりの楽しみ方を見つけられるストーリーを6ヵ月から1年かけて提供し、長期的な関係構築につなげます。通常型ECでリピート購入をうながすのは、非常に大変でした。定期購入ならば、通常型ECの抱える問題を解決できます」

HATCHが狙うのは30代後半の富裕層で、価格も1ヵ月当たり5000円と、あえて高めの設定にしている。「高級感」「本物感」で顧客に訴求し、HATCH自体のブランディングも強化して、他との差別化を図る考えだ。

「キュレーターを選ぶ際のイメージは、『情熱大陸』に出てくるような方々です。マスすぎず、エッジ感があって、その業界内では知名度もある。著名なキュレーターを集めてサイトを充実させていきます」

定期購入を拡大させつつ、三浦社長は派生するサービスで収益化をはかる戦略を描いている。キュレート集団「HATCH」を組織し、その目利きの能力を活かしたサービスを企業向けに提供する考えだ。そのためにも、HATCHをブランド化することが重要になる。

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