2013年1月号

定期購入型ECで「買い物」を変える

選択肢が多すぎる時代 消費者の「選択行動」に変化

里村卓也(慶應義塾大学 商学部教授)

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選択肢が豊富にあることで、消費者に満足感をもたらすこともある。では、どのような条件下で、消費者は「選択肢が多すぎる」と感じてしまうのか。今、消費者が容易に判断でき、選択結果に満足する販売の工夫が求められている。

2011年の消費者向けEコマースの市場規模は、経済産業省の推計によると8兆4590億円に達している。では、消費者はどのような基準でEC(Eコマース)サイトを選んでいるのであろうか。

信頼できる他人に任せて選択の困難を解決

経済産業省の調査(図参照)では、「価格が安い」に次いで、「商品数が豊富」であるとか「商品の検索/絞り込みができる」という理由でサイトを選んでいる消費者が多い。

商品数が豊富であれば欲しい商品を見つけることもできるし、色々な商品を比較検討することもできる。

一方で、あまりに選択肢の数が多すぎたり、選択のために多くの要素を考慮しなければならなかったりする場合には、我々は選択することに対して大きな困難やストレスを感じてしまう。

今、定期購入や頒布会という購入形態が再び注目されているのは、Eコマースの普及により選択肢が多すぎることに直面した消費者が、選択を信頼できる他人に任せることで選択における困難を解決したいと望んでいるからであろう。

説得的コミュニケ―ションの研究では、発信者の信憑性や魅力が説得効果に影響するとされているが、定期購買では、そのような信憑性や魅力を持つ人物に選択対象の情報を発信してもらうことで、選択に対する消費者の満足を高めていると考えられる。

「選択肢が多すぎる」と感じてしまう条件とは

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選択肢が多すぎると選択肢過多に陥るということは、これまでも多くの研究で指摘されている。選択肢や商品属性の数が多すぎて自身の情報処理能力を超えてしまった場合には、「情報過負荷」と呼ばれる状態になってしまう。このような認知的緊張を回避するためには、特定の属性にのみ注目して判断するなどの単純な判断方法で選択をしたり、選択自体をあきらめてしまったりする。

もっとも選択肢過多は常に発生するという現象ではなく、選択肢数は多ければ多いほど選択における消費者の満足度が高くなるという研究も数多く存在している。

そのため、どのような条件では選択肢が多いほうがよく、どのような条件では選択肢過多が生じるのかについて知ることが必要となる。いくつかの研究によると選択肢過多が生じるのは、選択肢がカテゴリー(消費者にとって意味のあるまとまり)に整理さててれていない場合、選択肢間の類似性が高い場合、商品の属性数が多い場合、選択のための時間が少ない場合などである。

一方、選択肢が多いほうがよいのは、消費者自身が自分の好みをはっきりと認識している場合などである。したがって選択肢過多を減らすことを目的として定期購買を提供するためには、商品や消費者の特性が上記のような条件に当てはまるかを知っておくことも必要となろう。

消費者の判断を容易にする仕掛けづくりが重要に

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より一般的には、消費者や選択意思決定をする環境によって選択に対する評価は変わる。そこで消費者の選択を容易にして選択結果にも満足してもらうためには、選択肢数を減らす以外にも選択を容易にするための仕組みづくりが必要となってくる。

消費者行動研究では、消費者によって商品への思い入れの強さや商品の知識が異なり、さらに選択のための情報探索や選択に至る判断の方法も消費者により異なるとされている。

このような個人特性と購買に至るまでの意思決定プロセスも把握して、情報提供や商品提示をカスタマイズすることで選択を容易にすることも考えられよう。

また、商品選択時に重視する評価軸も消費者によって異なる。Eコマースであれば、入会時に行う消費者アンケートや過去の閲覧・購買履歴の情報をもとに、消費者の重視する評価軸を個人別に把握することは可能であるので、個人別の評価軸を把握して情報提供や商品提示を行うことも考えられよう。

これからもEコマースでは選択肢の数は増え続けるであろう。しかし選択肢が多くても、消費者が容易に判断でき選択結果に満足することができればよいのである。商品数が豊富で、かつ選びやすいEコマースが今後も求められると言えよう。

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