ベールに包まれたジェフ・ベゾスの宇宙構想
アメリカの成功者たちが次々と宇宙ベンチャーを立ち上げ、開発を競っている。その中の1人であるジェフ・ベゾスはしかし、競合他社とは違う動きを見せている。
今世紀に入ってから宇宙開発のパラダイムが大きく変わり始めている。これまで、あまりにもコストが巨大でリターンが少なく、市場価値よりは公共性が重視されてきた宇宙開発は政府主導で行うのが当然であった。しかし、技術が陳腐化し、コストが下がってきたこと、政府が財政難から宇宙予算を削減し、高い技術を持った技術者の流動性が高まったこと、そして、巨大な個人資産とパイオニア精神を持つベンチャー事業家が現れたことが大きい。シリコンバレーの成功者たちがこぞって自らの手元資金で宇宙ベンチャーを始め、既に一定の成功がみられるようになってきている。さらに、彼らの中で「米ソ宇宙競争」ならぬ「ベンチャー宇宙競争」が始まり、それが更なるコストの低下と市場の拡大につながると期待されている。
民間の宇宙開発の本格化で宇宙旅行も実現可能に
例えばヴァージン・グループの総帥であるリチャード・ブランソンはVirgin Galacticという会社を立ち上げ、大気圏を一時的に脱して数分間の無重力体験ができるサービスを2013年から商業的に提供するとしている。また、ペイパルの創設者で、電気自動車の開発製造を行うテスラ・モーターズのイーロン・マスクはSpaceXという企業を立ち上げ、民間企業として独自にロケットを開発し、既にNASAと契約を結んで国際宇宙ステーションへの物資の供給を始めている。ホテルチェーンのオーナー、ロバート・ビゲローは、民間資金だけで宇宙ステーションを建設し、それを「宇宙ホテル」として一般の顧客も宇宙に滞在できるサービスの提供を目指しており、既に実証の段階に入っている。
このように、IT産業を中心とする、ベンチャー企業の成功者たちがこぞって宇宙事業に乗り出し、これまで政府主導で進められてきた宇宙開発のパラダイムを根底から覆している。アマゾンCEOのジェフ・ベゾスもそのうちの一人だ。
64年生まれで、幼少の頃にアポロ計画の成功を見た原体験を持っている彼は、00年にBlue Originと呼ばれる企業を立ち上げ、地球と宇宙を往還する有人宇宙船を開発している。他にも自身の投資会社を立ち上げ、アポロ11号の第一段ロケットを海から回収するという事業も行っている。しかし、ベゾスの民間宇宙事業への関わり方は、ブランソンやマスク、ビゲローなどの関わり方とは若干異なっている。
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