イチロー移籍で注目される任天堂の動向
米メディアの中には「移籍に伴ってマリナーズでの任天堂の時代も終わるのでは」との見方も出ている。イチローが去った今、任天堂アメリカの動きに注目が集まる。
マリナーズのオーナーグループの再編を巡る動きは、このところ実は、水面下で活発化していた。マリナーズの株式は55%を任天堂アメリカが、30%をクリス・ラーソンというマイクロソフトの元役員が、11%を初期の携帯電話ビジネスで富を築いたジョン・スタントンという実業家が所有している。この大株主の1人、ラーソンの離婚問題が訴訟に発展。今年に入って離婚問題が決着したラーソンは今、多額の慰謝料支払いを迫られている。
この経緯を追っている地元の著名コラムニスト、アート・シール記者によれば、「ラーソンは、ジョン・スタントンに株式27%分の購入を打診したが、断られた」という。交渉が決裂したのは、「ラーソンの売却希望額が高かったから」ことが理由。具体額は不明だが、これは今年3月にドジャースが20億ドル(約1600億円)という、大リーグのチームの売却額としては史上最高額で売られる前の話で、今なら案外、適正だったかも知れない。
放映権料の急騰で高まるマリナーズの価値
離婚訴訟の過程で今年に入ってマリナーズの〝時価〞は6億4100万ドルと評価されたが、8月に5億ドル程度の価値と見積もられていたパドレスに8億ドルの値がついたばかり。このインフレの背景はテレビマネーにあり、パドレスは今年、契約期間20年、総額12億ドルのテレビ放映権を結んだことで、チーム評価額が3億ドル分の上乗せにつながった。
一方、マリナーズのテレビ契約は現在、契約期間10年、総額4億5000万ドルの2年目だが、2015年のシーズンが終わると、現在の契約を破棄し、新しい契約を結び直すことができる。その場合は少なくとも今の倍にはなるとされており、今の段階でマリナーズを売りに出せば、パドレス並み、もしくはそれ以上の売値になると予想される。さらにマリナーズの各選手の契約を見ると、現時点で確定している来季の年棒総額は4000万ドル余りでしかない。不良債権も少ないため買い手には魅力的で、そもそも近い将来、高値で身売りするためにマリナーズはここ数年、年棒を絞ってきたとの見方さえある。
その中で、年俸約1800万ドルと言われるイチローの移籍がどう査定されるかだが、彼がいたことで、セーフコ・フィールドに広告を出してきた日本企業は少なくない。今季の広告は継続されるようだが、来季以降も続くとは限らず、その損失をいくらと見積もるか。また、少々古いデータになるが、イチローはこれまでシアトルという街にも貢献してきた。
例えば、イチローが移籍してきた01年のシアトル観光局の資料では、その年のホテル稼働率が10%もアップしたとされる。また、イチローが年間の最多安打記録を更新した04年には日本人観光客が8万1000人も訪れた(ピュージェット・サウンド『ビジネス・ジャーナル』05年2月28日)。近年、そうした影響力は下がったとはいえ、今年も日本の修学旅行が200人、300人と団体で姿を見せていた。そういった目に見えない街への貢献が減るのは確実で、そのダメージをどう評価するか。
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