風力・太陽光・バッテリーで安定供給

化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が求められる中、風力発電、太陽光発電は注目を集める。恒常エネルギーとしてはもちろん、災害時に活用できるシステムの特徴とは。

野元一臣 ビルメン鹿児島 代表取締役社長

非常時だけではなく、平常時でも風力発電、太陽光、バッテリーのハイブリッドシステムで電力の供給が可能

高効率発電で普段も災害時も安定供給

エコスクールを推進する品川区立御殿山小学校に導入された小型風力発電機「TOMOの風」。再生可能エネルギーについて学ぶ教材として利用されながら、災害時には蓄積された電気が避難所の非常用電源として利用できる、まさに「一石二鳥」のシステムとなっている。

従来の小型風力発電は発電効率が悪いうえ、出力が安定せず、費用対効果が課題だとされてきた。同機はその弱点を克服するためフライホイールによる発電電圧の安定化を実現。さらに、角度が変化するブレートを採用し、微風起動、高速移行、過剰回転防止ができるよう、技術的な改善を複数か所行っている。開発・導入を手掛けたのは鹿児島市に本社を置くビルメン鹿児島だ。

代表取締役社長の野元一臣氏は、「特許8件、意匠登録6件と、技術の新規性が認められています。しかもそれがコスト削減、省エネにつながるわけですから、エンドユーザーの皆様に多くのメリットが生まれると確信しています。御殿山小学校が導入されたのは独立電源方式の非常用電源システムですが、私たちが開発したシステムは普段でも使用できます」と太鼓判を押す。

他のシステムと組み合わせて発電可能

小型風力発電機「TOMOの風」が選ばれている背景には、風力、太陽光、バッテリーのハイブリッドシステムとして機能させることができるという点がある。ハイブリッドにすることで、それぞれの発電方法のデメリットを補いながら効率的な発電が可能となる。天気の悪い日は風力、風の弱い日は太陽光で発電できるため常に安定した供給が実現。電力会社からの供給は受けずに独自にハイブリットシステムを構築し、電力管理、安定した電力を供給できる。また、自然災害の多い日本では昨今、送電の拠点を分散し、需要側と供給側との双方から電力のやりとりができる、『賢い』送電網「スマートグリッド(次世代送電網)」の具現化が叫ばれているが、同機を導入することでその実現に寄与することができる。野元氏は「停電対策という直接的な役割を果たしながら、広義ではスマートシティを目指すシステムとして普及させていきたいと思います」と、今後のビジョンを語る。

WinWin-3000 障害者支援センターこすもにて使用中

農地からオフィスまで導入のしやすさで優位

これまで再生可能エネルギー発電機が導入されにくかったのは、立地や各産業のニーズに柔軟に対応することが困難であったことが挙げられる。

「TOMOの風」は立地という点においては、3m四方の土地があれば施工可能。小型化と耐久性を両立する「WinWin-3000」に至っては市街地の家庭に設置して使用することを想定して製造されている。また、昼間電力消費の一部を夜間電力に移行させる「ピークシフト」ができるようシステムが構築されているため、企業にとっても好都合だ。日中エアコンやPCといったコンピュータを稼動させることで、電力消費量が急増するが、電力は基本的につくり置きができないため、ピーク時には電力供給が追いつかなくなる可能性がある。「ピークシフト」は、電力の消費量が低い夜間にバッテリーに充電しておき、昼間に電力網からの電力を消費しないようにすることで、電力消費をできるだけ平準化しようとするものであり、コスト面の課題が解決可能となった。

野元氏は、オフィスや工場へのハイブリッドシステムの導入が、『夢物語』ではなくなってきていると強調する。「設置環境を選ばず導入できるこのシステムは、現在多くの方からご好評を頂いており、営業車をEV車に買い替えたときなど、自社内にチャージステーションをつくり、夜間に充電するといったニーズにも応えることができる。これまでにない場所への導入がかなり現実的なものになってきていると思います」。

不安を多面的に解決するシステムづくりを

野元氏は小型風力発電機「TOMOの風」の開発当初を改めて振り返り、「防災は一方的な取り組みでは実現しない」と話す。「技術だけ進んでもそれを導入する環境やコスト面の課題が残れば社会システムの中に組み込まれていかない。特に防災においては、安心・安全・安定という要素を満たしていなければいけません。過去の災害の教訓を生かしながら、不安要素の払しょくに妥協することなく、都市直下型地震にも耐えうるシステムづくりをしていきたいと思います」。「TOMOの風」が実現した都市圏における発電。発電場所と供給地のギャップを埋めながら非常時に備えることができる。

現在ビルメン鹿児島は防災における避難所の非常用電源システムに力を入れており、宮古島、与論、種子島指宿など離島を含め地域防災など行政の避難所に実績を持っている。非常時だけではなく、平常時でも風力発電、太陽光、バッテリーのハイブリッドシステムで電力が供給できる非常用電源システムを構築している。また近い将来、メガワット級の自然エネルギー供給システムを実現し、持続可能な社会を構想だけでなく具現化する。長崎県佐世保市ハウステンボスではすでに2年間の国内実証実験を行い安定した大電力を供給ができ、実用レベルまでシステム技術が構築できている。

これにより再生可能エネルギーの更なる安定供給が期待される。

お問い合わせ


URL:http://www.tomonokaze.jp/

 

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