熊本地震に学ぶ公助、自助、共助

想定外に備え、過大力に立ち向かうには、まず「災害は来ないという思い込み」を廃して、災害を正しく想定するように勤めなければならない。行政主導、トップダウン型の災害対応ではない、ボトムアップ型の新しい災害対応システムが求められる。

はじめに

熊本地震から1年を経過した。倒壊した家屋の解体がほぼ終わり、住宅再建や復興まちづくりが遅ればせながらも、ようやく前に進みつつある。ところで、この1年間の応急期から復旧期の対応を振り返ると、避難所での混乱が関連死を引き起こすなど影の部分が見られる反面、地域に根ざした復興の論議が各所で繰り広げられるなどの光の部分も見られる。熊本地震では、この光と影の両面を正しく捉えなければならないが、そこから引き出される大切な教訓は「公助の限界を共助で補完する」ということに尽きる。

熊本地震災害の特徴

公助と共助を考えるに先立って、熊本地震の特徴を簡単に整理しておこう。

破壊のメカニズム的な特徴は、過去に経験しなかったような破壊の連鎖が起きたということである。震度7の激しい揺れが連続して起き、4,000回をはるかに上回る余震が発生し続け、そこに豪雨や火山噴火が追い討ちをかけた。その前例の無い破壊に裏をかかれた形で、被災地は適確に対応することができなかった。

災害対応のマイナス面の特徴は、想定外が自然の破壊側だけではなく、それを受けた社会の対応側にも生じたということである。庁舎などの重要拠点施設が損壊し防災機能を果たせず、事前に想定していた何倍もの被災者が避難所に殺到し、そこに現場のニーズとかけ離れた指示が舞い降りてきた。混乱に混乱が拍車をかける形で、被災地の被害は増幅してしまった。

災害対応のプラス面の特徴は、コミュニティをベースとした地域力が随所で発揮されたことである。避難所の混乱を地域自治で乗り切ったところが少なくなかったこと、復興まちづくりの方針を集落ぐるみの討議で見出したところが少なくなかった。その結果として、被災地からの人口の流出に歯止めが掛かっている。

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