電気火災から歴史的町並みを守る

歴史的建造物を有する地域は、建造物の防災対策を進めなければいけない一方で、建造物の経年、保全の観点などから、防災対策が困難な場合が少なくない。建築のプロに伝統的町並みの防災対策、特に電気火災への対策について聞いた。

森田昌司 日本建築家協会 近畿支部 奈良地域会 地域会長

建築のプロ集団が進める「災害に強いまちづくり」

熊本地震では、熊本城をはじめとする多くの文化財が被災した。文化庁の調査によれば、歴史的建造物1684件のうち25%相当の433件が、修復に専門家の助言が必要な被害を受けたという。国などからの補助金が出ても、再建や修復には億単位の費用が掛かる場合も少なくない。

「平時は防災にお金を掛けることを無駄に思えるかもしれませんが、もしも大規模地震が起これば、その被害総額は防災費を上回る莫大な金額になります。多くの歴史的建造物を有する地域こそ、地域経済のダメージを軽減するためにも万全な災害対策が欠かせません」と語るのは建築家の森田昌司氏。日本建築家協会(以下、JIA)近畿支部 奈良地域会で地域会長を務める人物だ。

JIAは世界約124ヶ国、130万人の建築家が所属する国際建築家連合で、日本支部には5000名余りの会員が所属。建築のプロとして大規模災害時の災害対策、復旧・復興に対する活動や助言、災害予防研究などの活動を行なってきた。

これら活動の一環として、近年、JIAが尽力しているのが「災害に強いまちづくり」への取り組みだ。2014年に香芝市と広陵町、2015年には葛城市と、いずれも多くの歴史的建造物を有する奈良県内の3つの自治体と災害時応援協定を締結。建物の危険度判定や住宅相談といった災害が発生した後の支援活動だけでなく、防災・減災に向けた平時の活動にも積極的に取り組むという。平常時からの活動を目的として災害時応援協定を結ぶのは今回が初となる。

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