大規模地震時の電気火災の発生抑制/6割強が電気に起因する火災

出典/大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会/内閣府(防災担当)「感震ブレーカーの普及に向けた取組状況」平成28年3月、「大規模地震時の電気火災の発生抑制対策の検討と推進について」平成27年3月より

図 大規模地震時の出火原因

≪阪神・淡路大震災≫

総出火件数139件のうち、電気関係は85件(約6割)

<消防庁検討会報告書(1998)>

≪東日本大震災≫

総出火件数110件のうち、電気関係は71件(約6割強)

<日本火災学会調査(2014)>

出典/大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会/内閣府(防災担当)「感震ブレーカーの普及に向けた取組状況」平成28年3月、「大規模地震時の電気火災の発生抑制対策の検討と推進について」平成27年3月より

地震火災の出火原因は時代とともに推移

近年の大規模地震発生時においては、電気を起因とする火災が多くみられるようになっている。

阪神・淡路大震災(1995年)においても火災の専門家等から指摘されてきたところであり、感震ブレーカー等の普及が一定の抑制効果を有する点についても提案がなされてきた。

しかしながら、その後、感震ブレーカー等の普及は大きくは進まず、東日本大震災(2011年)においても、津波火災を除く地震の揺れによる出火の主な原因は電気に起因するものと考えられる旨の調査報告もなされている。

切迫性の高い南海トラフ地震及び首都直下地震について、それぞれ被害想定や国の基本計画等が策定されているが、中でも首都直下地震については、木造住宅密集市街地における同時多発延焼火災等の危険性が改めて指摘されている。

人的・物的被害の軽減対策として、これまでの市街地整備事業や避難地・避難路の整備、延焼遮断帯の整備等の推進と合わせて、ソフト的な出火防止対策、特に感震ブレーカー等の普及に努めることで、一定の抑制効果が期待できる。

内閣府、消防庁、経済産業省の連携のもと、「大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会」が開催され、感震ブレーカー等の性能評価の考え方や設置にあたっての留意点等をガイドラインとして作成するとともに、今後の普及方策等について検討を行い報告書としてとりまとめている。

改めて地震火災は、多くの人や建物が集積している都市部や市街地ほど、その危険性が高くなる。一方で、地震がいつ発生するかを予測することは困難であったとしても、地震に伴って発生する可能性のある火災は、適切な対応を行えば相当程度その被害を軽減することができる種類の二次的な被害であるともいえる。

感震ブレーカー等の設置は、実際の大規模地震を経てその有効性が確認された取組というより、過去の地震火災の検証からその有効性が期待される。

感震ブレーカー等の役割等

大規模地震時における電気に起因する出火原因、出火状況は、

  1. ・地震による揺れの直後に家庭内の各電気器具の安全確認を十分に行うことができずに出火する場合
  2. ・地震直後に大規模な停電が発生し、家庭内の各電気器具の安全確認を十分に行えない状態で、復電後に出火する場合
  3. ・そもそも不在時に地震が発生し出火する場合などがある。
 

このような状況に対して、地震時に一定以上の揺れを感知した場合に自動的に通電を遮断する感震ブレーカー等は有効な手段と考えられる。そのため、阪神・淡路大震災の頃から、既に火災の専門家の間では、感震ブレーカー等の普及が提案されてきた(総務省消防庁1998年)。

地震火災の概要

1995年1月17日5時46分に発生した阪神・淡路大震災による火災は285件発生し、被害状況は、焼損棟数483棟、建物焼損床面積834,633㎡、火災による死者数は559人であったと報告されている(総務省消防庁1998)。総出火件数285件のうち、建物火災件数が 261件(92%)と大半を占めている。

火災の発生を時間経過別に整理すると、地震発生当日の1月17日から19日の3日間に発生した火災件数は247件であり、全体の約87%を占めている。地震発生当日の17日だけでも206件(72%)が確認でき、全体の7割強が地震発生当日に発生していたことが見てとれる。

2011年3月11日に発生した東日本大震災の地震火災については、津波に起因する津波型火災と地震動に起因する地震型火災の両者が発生した。

総出火件数378件のうち、地震型火災は163件、津波型火災は162件、地震動との関連が低い間接的な火災は53件であった旨の調査結果が出されている。

特に、電気に起因する火災との関係が深い地震型火災の発生件数は、宮城県下で最大の32件が発生し、次いで東京都31件、茨城県23件、福島県22件となっており、地震型火災は震源域に近い地域のみならず、広範囲で発生していたものと考えられている。

なお、一般的に地震火災の発火源としては、火器使用として炊事場のガスコンロ等からの出火がイメージされる場合も多いと考えられるが、東日本大震災でのガスに起因する出火は、約 4%(6/163件)とわずかであった。

この点については、地震時に揺れを感知してガスの供給を各家庭で停止する機能を有したマイコンメーターがほぼ100%普及していることや、各地域単位でガス供給の停止を行うSIセンサーを有した中圧ガバナ(整圧器)の整備等の安全対策がガス事業者において講じられてきたことも寄与しているものと考えられる。

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り69%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全文読むことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。