被害を最小限に抑えるために 災害種別避難誘導標識システム

近年の地震により、いざという時に、どこへどういう経路で逃げたらいいか、日頃から意識する必要性を私たちは再認識した。2016年3月、政府が新たに決定した「災害種別避難誘導標識システム」を読み解くことで、非常時に求められる事前の対応法を探る。

避難所に向かうための安全性と確実性

四季折々の自然に恵まれ、風光明媚な国、日本。一方で地震や台風、洪水や火山噴火といった自然災害も多く、今年4月には熊本県でマグニチュード6.5の地震が起きたばかりだ。近年、異常気象によりその影響が特に大きくなってきているが、発生した災害を小さくすることは極めて難しく、私たちは被災を少なくする“減災”という対策が重要となってくる。その対策法において、鍵となるもののひとつが、屋内から避難場所への避難誘導だ。市民が安全かつ確実に避難場所に避難できるよう、また外国人が見ても一目で意味がわかり、適切な行動がとることのできる全国的に標準化された災害種別図記号が必要となる。

この動きは、現在世界的にも関心が深まっており、各国が対策を始めているものであり、日本では内閣府(防災担当)と総務省消防庁などによる関係府省庁等連絡会議が整備を進めている。平成25年災害対策基本法改正により定められた「指定緊急避難場所」及び「指定避難所」の表示についての標準化された図記号が検討され、今年3月23日に改正・制定された規格の中に、日本工業規格(以下「JIS」)において図記号を使った表示方法に関わる「災害種別避難誘導標識システム(以下「標識システム」)(JIS Z9098)」がある。

中野 豊一 般社団法人 日本標識工業会 会長

7種の避難誘導標識システム

今回決定したJIS Z 9098は、津波避難誘導標識システム(JIS Z 9097)を基本として策定されている。このJIS Z 9097は、2004年に起こったインドネシア・スマトラ島沖大規模地震に伴う大津波によって、インド洋に連なる各国で多くの人命が奪われたことに起因する。死者・行方不明者は約23万人。日本においても東日本大震災における津波で多くの人々が犠牲になったことは記憶に新しい。この未曾有の被害を受け、日本における津波対策の取り組みが検討されるようになり、その一環として「津波標識」を整備するきっかけとなった。

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