市町村の8割が未整備/国家戦略版手引きでBCPを後押し

地震等による大規模災害が発生した際、地方公共団体は、災害応急対策や災害からの復旧・復興対策の主体として重要な役割を担うことになる一方、災害時であっても継続して行わなければならない通常業務を抱えている。
資料/「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」内閣府(防災担当)平成28年2月より

 

過去の災害では、地方公共団体自身が被災し、庁舎や電気・通信機器の使用不能等により災害時の対応に支障を来たした事例が多数見受けられる。このような非常事態であっても地方公共団体が優先的に実施すべき業務を的確に行えるよう、業務継続計画の策定等により、業務継続性を確保しておくことが極めて重要である。

しかし、東日本大震災では、庁舎・職員が被災した市町村においては、一時的に行政機能が失われる深刻な事態に陥り、その業務の実施は困難を極めるものとなった。

このことは、地方公共団体における業務継続計画の策定の必要性をあらためて認識させることとなったが、業務継続計画の策定率は、市町村においては依然として低く、特に人口の少ない小規模な市町村ほど低位な傾向にある。

業務継続計画とは

業務継続計画とは、災害時に行政自らも被災し、人、物、情報等利用できる資源に制約がある状況下において、優先的に実施すべき業務(非常時優先業務(※1))を特定するとともに、業務の執行体制や対応手順、継続に必要な資源の確保等をあらかじめ定め、地震等による大規模災害発生時にあっても、適切な業務執行を行うことを目的とした計画である。

※1非常時優先業務とは

大規模災害発生時にあっても優先して実施すべき業務が非常時優先業務である。

具体的には、災害応急対策業務や早期実施の優先度が高い災害復旧・復興業務等(これらを「応急業務」と総称する。)のほか、業務継続の優先度の高い通常業務が対象となる(図)。発災後しばらくの期間は、業務の実施に必要な資源(以下「要資源」という。)を非常時優先業務に優先的に割り当てるために、非常時優先業務以外の通常業務は積極的に休止するか、又は非常時優先業務の実施の支障とならない範囲で業務を継続する。

図 非常時優先業務のイメージ

資料/「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」内閣府(防災担当)平成28年2月より

業務継続計画の必要性及び地域防災計画との関係

地域防災計画は、災害予防、災害応急対策、災害復旧・復興について実施すべき事項が定められているが、役所の人員や施設・設備等が甚大な被害を受けた場合の対応までは規定していないことがほとんどである。

しかしながら、過去の災害では、業務継続に支障を及ぼす庁舎の被災や停電等の事例も見受けられた。

したがって、地域防災計画に定められた業務を大規模災害発生時にあっても円滑に実施するためには、業務継続計画を策定し、地方公共団体自身が被災し、制約が伴う状況下にあっても、業務が遂行できる体制をあらかじめ整えておくことが必要であり、「防災基本計画」においてその旨を位置づけるとともに、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」や「首都直下地震緊急対策推進基本計画」においては、それぞれ対象となるすべての地方公共団体で策定率 100%を目標としている。

また、地方公共団体は、平常時から住民への公共サービスの提供を担っているところであるが、これらの業務の中には、災害時にあっても継続が求められる業務が含まれている。

応急業務に限らず、優先的に継続すべき通常業務までを含めた業務の継続が遂行できる体制を検討しておくことにある。

業務継続計画に特に重要な6要素

業務継続計画の中核となり、その策定に当たって必ず定めるべき特に重要な要素として以下の6要素がある。

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