保育士の業務負担を減らし、保育の質を高める「登降園管理システム」

待機児童問題の解消に向けて、保育所の定員拡大や新設が進む一方で、保育士の業務負担は増加し続けている。NTT西日本は「登降園管理システム」を開発、保育士の業務負担軽減と保育の質の向上に成果をあげている。

増大する保育士の業務負担をICTで軽減

保育士の業務は子どもの保育・教育だけではない。登降園時間の記録や行政へ提出する帳票作成など、周辺業務もかなりのウェートを占めている。さらに、「2015年度から『子ども・子育て支援新制度』が始まり、それまで一律だった保育時間が、保護者の就労時間や家庭の状況により園児ごとに異なるようになりました。子どもたちの登降園時間を正確に把握し、市町村に延長保育料の請求をしなければならず、帳票の作成も増えています」と、認定こども園を運営する学校法人神童学園の北川定行理事長は、保育士の業務負担増大を説明する。

NTT西日本の中山和美氏は、自らも母親として保育所へ子どもを預けて仕事をしてきた。保育士たちが夜遅くまで園に残り、事務作業の多くを手書きで行っているのを見て、解決策がないか考えたという。

そこで保育所・幼稚園に特化したシステムを開発するANSと連携し、課題解決へ向け新しいサービスの開発をめざした。担当したANSの福田凡子氏が元保育士ということも、サービス化への手助けとなった。

NTT西日本とANSで保育士業界の実態を調査中に、「子ども・子育て支援新制度」が開始されることになった。新制度導入で保育士の負担増が見込まれる業務を分析し、「登降園管理」の効率化に着目し、新システムを提供することにした。

「登降園管理システム」では、保護者が園内に設置してあるカードリーダーへICカードをかざすだけで、園児の登園・降園の時間を自動的に記録できる

欠席の連絡はインターネット上から保護者が申告できるようにし、保育士の負担を軽減している

負担軽減で、「保育の質」を高める

2015年6月から提供開始した「登降園管理システム」は、保護者が園内に設置してあるカードリーダーにICカードをかざすだけで、園児の登園・降園の時間を自動的に記録できるシステム。登降園時間と出欠記録はデータとして蓄積され、帳票が自動的に作成される。自治体へ提出する帳票作成の手間が大幅に削減され、周辺業務の負担が激減する結果となった。

また、これまで電話連絡が主だった欠席の連絡はインターネット上から保護者が申告できるようにし、朝の電話対応の減少にも効果があった。このほか、指導計画・保育日誌の作成・管理ができる機能も搭載した。

このシステム導入によって、毎月の事務作業時間をそれまでの1,560分から20分まで削減できた保育園もあったそうだ。業務負担が軽減されたことで、子どもと向き合う時間が増え結果的に保育環境の向上へとつながっている。

福田氏は、自らの経験を想起しながら「先生が時間と心にゆとりを持つことが、子どもたちの笑顔につながる。そのことを実感しています」と笑顔を浮かべる。

ICTの導入は業務の効率化だけでなく、情報の共有や蓄積にも役立つ。指導計画や保育日誌などをサーバーに保管することで、保育士が培ってきた経験とノウハウを次へ繋げることができる。各保育士の知見やノウハウを、全国の保育所で共有することも可能になるはずだ。

登降園管理に限らず、ICT化に向いている業務は多い。NTT西日本は、保育士の業務効率化や保育の質の向上をめざして、サービス開発を続けていく。

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