海士町地方創生プロジェクト 光ブロードバンドを「地方創生」の基盤に

光ファイバー敷設によるブロードバンドの整備は、地域を大きく変える可能性を秘める。島根県の離島・海士町は、NTT西日本と連携し、独自のアイデアで「モノづくり」「人づくり」の両面に光ブロードバンド環境を活用。Iターン者の増加など、地方創生に確かな成果をあげている。

「光ブロードバンド」は離島の地理的ハンデを克服するインフラ

島根半島沖合の隠岐諸島のひとつ、海士町(中ノ島)。豊かな海と豊富な湧水に恵まれた島は、古くから海産物の宝庫として知られる。但し、本土からの交通は高速船かフェリーに限られるなど、離島という地理的ハンディキャップは、人口減少や高齢化の要因になるなど深刻な課題も抱えている。

「海士町は平成の大合併の中で、単独町政を選択し、『自分たちの島は自ら守り、島の未来は自ら築く』ことを決断しました。住民と議会、行政が一体となって2004年に『海士町自立促進プラン』を策定しました」と海士町の山内道雄町長は語る。

その挑戦を後押しし、離島の課題を克服するための方策の一つとして、海士町はNTT西日本の協力のもと、2010年に島内一円に光ファイバー網を整備。「モノづくり」と「人づくり」の基盤として、光ブロードバンドをフル活用している。

豊かな海と豊富な湧水に恵まれた海士町(中ノ島)

特産品の情報を映像化し、高速インターネットを活用して都市部の飲食店のモニターに配信

「モノづくり」と「人づくり」に活用

まず「モノづくり」では、地域特産品のプロモーションやブランディングに光ブロードバンドの強みである高精細な映像配信を活かしている。海士町にはいわがきや白いかなどの海産物のほか、海士乃塩、隠岐牛、さざえカレーなどの特産品・加工品がある。

これらの特産品の情報を映像化し、都市部の飲食店のモニターに配信。ブランディングや購買意欲の向上に併せて、海士町への移住希望者の誘引手段としても期待を寄せている。

「人づくり」においては、島の次代を担う子どもたちを育むための「島前高校魅力化プロジェクト」をスタートした。このプロジェクトでは、島外または県外から高校に通う生徒の寮費や生活費を補助する「島留学制度」の導入や、高校と連携する公立塾「隠岐國学習センター」を設立。生徒数の確保と学力向上だけではなく、地域住民とのつながりを楚とし、島外、更には海外と交流することによる多様性のある人材づくりにも力を入れている。このような交流を実現する、学習環境にも光ブロードバンドを活用しているのがこのプロジェクトの特徴。内航船欠航による通学不能生徒宅への授業の遠隔配信や、他県の高校との遠隔交流学習などの先進的な取り組みは全国からも注目されている。

島の高校では、内航船の欠航などを考慮して生徒家庭に遠隔授業を配信するなどの取り組みを行っている

この他にも、都市部と同等の高速インターネット環境(あま光ネット)を整えてU・Iターン者を支援するとともに、双方向通信が可能なIP告知システムで行政情報やフェリー発着情報の配信を行ったり、独自のローカル放送局を開局するなど、光ブロードバンドを最大限に活用している。

結果、2013年から15年の3年間で海士町内の事業所等では104人の新規雇用を創出、海士町自立促進プランの策定から2014年までに、483人のIターンを実現した。

地方創生のアイデアを具現化するためのインフラとして光ブロードバンドを活用する海士町。NTT西日本は、海士町をはじめ、様々な地域課題を持つ自治体より頂いた知見をもとに、今後も地域に貢献していく。(了)

*2015国勢調査人口:2,353人 Iターン者数:521(356世帯)※H16~H27の延べ

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