台湾NO.1の訪日観光サイト経営者が語る、「日本の問題点」

台湾人の誰もが知る訪日観光情報サイト「ラーチーゴー」。同サイトを育てあげたジーリーメディアグループの吉田晧一代表は、「日本の訪日客の受け入れ態勢には、多くの不備が存在する」と指摘する。日本のインバウンド戦略の課題とは。
文・嶋田淑之 自由が丘産能短期大学・教員、文筆家

 

「ラーチーゴー!北海道」のウェブサイト。台湾では今、「台湾にないすべてがある」と北海道が大人気

日本政府観光局によると、2014年の訪日外国人の上位5か国は次のようになっている。

1位:台湾(2,829,800人)、2位:韓国 (2,755,300人) 、 3位:中国(2,409,200人)、4位:香港(925,900人)、5位:米国(891,600人)

ここで目を惹くのは、総人口2344万人の台湾から、人口の1割を超える人々が日本を訪れている点である。しかも、彼らのリピート率は80%に達する。

そして、それが実現した陰には、ある日本人起業家の貢献があったと言われている。

そこで今回、その人物、すなわち台湾No.1の訪日観光情報サイト「ラーチーゴー」などを運営するジーリーメディアグループ(吉日媒體集團)代表取締役の吉田晧一氏(33)にお話を伺った。

ラーチーゴーでは、台湾で関心の高い11の地方・県・都市を扱う

コンテンツ事業はアジアに商機

吉田氏は、防衛大学校を経て慶應義塾大学卒業後、大阪の朝日放送に入社。3年間、テレビCMの企画・セールスを担当していたが、2013年にジーリーメディアグループを創業した。その背景を次のように語る。

「日本には2兆円規模のテレビ広告市場があり、広告市場全体では6兆円に達しています。しかし、世界に先駆けて“超高齢社会”の到来した日本では、今後急速に、それらの市場が縮小していかざるを得ません。その一方において、海外、特にアジアの消費市場は若く、爆発的に拡大しており、しかも、多くの人々が日本のコンテンツに親しんでいます。アジアの消費市場こそは、テレビ局と限らず、日本のあらゆるコンテンツ産業が発展を続け得る唯一の道だと私は考えました」

吉田 晧一(ジーリーメディアグループ 代表取締役)

では、事業展開のフィールドをどの国に置くべきか?

市場規模を考えれば、まずは中国が思い浮かぶが、反日感情が強い上に、政治的にも経済的にもリスクが大きい。それと比べ台湾はたいへんな親日国であり、また政治・経済リスクも低い。

それだけではない。台湾は、デジタル先進国であるにもかかわらず、しかも、訪日観光客の多さにもかかわらず、訪日観光情報を的確に発信するウェブ媒体がほとんど存在していなかったのである。大きなビジネスチャンスだ。

「私が事業を構想していた当時の状況として、台湾から個人旅行で日本に行こうとする場合、訪日経験者の個人ブログを見ることくらいしか、日本の観光情報を入手する方法がありませんでした。クチコミサイトを含め、訪日観光情報専門サイトなど皆無だったのです」

ラーチーゴーでは、読者と同じF1層の台湾・香港人スタッフが自ら取材・発信する

ジーリーメディアグループとは

ジーリーメディアグループは、台湾・香港という2つの“繁体字中国語圏”をターゲットにして訪日観光情報を提供しており、換言すれば、中国本土などの“簡体字中国語圏”は対象外である。

社員数25人。台湾20人、香港1人、日本4人という構成で、社長以外は25〜34歳の女性。社内公用語は中国語。収益モデルは、広告収入が中心で、今年度の売上は約3億円の見通しだという。

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