AI×国産SFAで日本の営業文化を変える「最後発」の挑戦
営業担当者の活動データが蓄積されず、経験やノウハウが属人化したまま埋もれていく。多くの日本企業が抱えるこの課題に挑むのが、SALES GO株式会社だ。「データのチカラをすべての企業へ」を掲げ、誰もが使える国産SFA「GoCoo! SFA」を開発。代表取締役社長・内山雄輝氏が描く未来に迫る。

なぜ営業データは蓄積されないのか
属人化が生む機会損失
日本企業の営業生産性は、国際比較で長らく低迷が続いている。営業担当者が顧客と向き合う時間は業務全体の3割にとどまり、残る7割は情報整理や社内調整に費やされている。他方、欧米企業のベストプラクティスでは顧客対応時間が6割超に達し、この差が競争力の格差となっていると内山氏は分析する。
このような現状にもかかわらず、日本企業のSFA(営業支援システム)導入率は依然として10%以下に過ぎず、導入後も十分に活用できていない企業が非常に多い。こうしたデータをもとに、「日本企業で営業データを適切に蓄積し、活用できている企業は2〜3%程度だと思います」と内山氏は語る。
この日本企業とベストプラクティスの差分について、内山氏はこれまでの働き方の違いを指摘する。「欧米では転職することが一般的です。自分のキャリアを証明するためにも、営業データを残すことが必然となります」。誰がどの顧客にアプローチし、どのような提案をして、どれくらいの期間で成約に至ったのか。そうした記録は自身の実績を示す証拠となり、次のキャリアにつながる。だからこそ、SFAへのデータ入力が自然と習慣化している。
一方、日本では終身雇用を前提とした雇用環境が長く続いてきた。同じ会社で働き続けることが当然であるため、転職を前提とした環境と比較して、個人のデータを残す必要性が高くなかった。
近年、日本の雇用環境は大きな転換点を迎えている。労働力人口の減少や価値観の多様化が進むなか、データへの認識も確実に変化してきた。AIの活用が進み、データドリブンな経営の重要性が急速に高まっている今、蓄積されたデータがなければ精緻な分析に基づく戦略立案は難しい。データという“引き出し”が揃ってはじめて、AIという“頭脳”は本来の力を発揮する。
「世代交代とともに、働き方への意識は確実に変わりつつあります。テクノロジーを活用して生産性を高め、より付加価値の高い仕事をしたいと考える人が増えてきた。今こそ変革の好機です」と内山氏は語る。
SALES GOの事業成長を支える
「最後発」という優位性
SALES GOが提供する営業支援プラットフォーム「GoCoo! SFA」は、サービス面とビジネスモデル面においてSFA市場で「最後発」であることを最大限活用し、優位性を発揮している。
まずサービス面では、先行各社の長所と短所を徹底的に分析・研究した上で設計した点が大きい。高機能SFAの利点、ノーコードでの柔軟なカスタマイズ性、Excelライクな直感的操作性など、ユーザーが評価してきた要素は取り込みつつ、既存のSFAにおける複雑さや使いにくさといった課題の解消に努めた。
ビジネスモデル面の優位性は、スピード感をもって顧客の声をサービスに反映できる点にある。多くのSaaS事業者は開発・販売と導入支援が分離しており、導入後の支援はパートナー企業が担うケースが多い。SALES GOでは、開発から販売、導入後のサポートまですべてを自社で一貫して担う体制を構築し、顧客との接点を強固にしている。また、展示会への出展も積極的に行い、顧客と直接対話する機会を大切にしている。
「お客様がどんな課題を抱えているか直接聞き、目で見て、肌で感じる。想定しているニーズと実際の課題感にずれがないかを確かめながら進めています」と内山氏は語る。そこで得た声を即座に機能開発へ反映できることが、SALES GOの強みだ。
AI時代への適応力も、後発ならではの武器だ。既存SFAベンダーは、長年積み重ねた課金モデルやレガシーシステムの制約から大きな変革が難しい。一方でSALES GOは、AI活用を前提とした柔軟な事業設計を初期段階から組み込み、変化を前提に動ける機動力を備えている。
さらに、事業を率いる内山氏自身のアントレプレナーシップも重要な強みだ。学生起業家としてSaaS事業を成長させ売却まで経験したのち、2022年には自社のIT部門をMBOにより分社化しSALES GOを創業。連続起業家としての経験値が、事業の意思決定やスピード、組織づくりに活かされている。
その挑戦を支える基盤として、株式会社ブロードリーフとの資本業務提携も大きい。安定した経営基盤に加え、人材・ネットワークといった経営資源を柔軟に活用できる環境が整ったことで、プロダクト開発から市場展開までの意思決定が一段と迅速になった。
「ソフトウェアビジネスの成長のためには、さまざまなリソースが求められます。事業成長にコミットできる環境を選びました」。内山氏の言葉は、その背景をよく表している。ブロードリーフ代表取締役社長・大山堅司氏とも密にコミュニケーションを取りながら、ミッションである「データのチカラをすべての企業へ」の実現を見据える。

日本の生産性向上のために
SALES GOが目指す未来像
内山氏が目指すのは、日本企業にデータを残す習慣を根付かせ、ひいては日本の生産性を向上させることである。同社はデータ蓄積をさらに加速させるため、AIを活用した新サービスの開発も進めている。
AI議事録ツール「GoCoo! Meeting」は、会議や商談の音声をリアルタイムで文字に起こし内容を要約する。話した内容が自動的にテキストデータとして残るため、入力の手間を省くことができる。同サービスは内山氏の出身である静岡県湖西市にも導入され、自治体のDX推進に貢献している。
さらに開発中の「GoCoo! Agent」では、営業担当者が報告した内容に対し、AIが質問を返すことで必要な情報を整理する。これは単に情報の整理・蓄積に留まらず、営業担当者の教育としても活用できる。
「未来の社会がどうなるかは誰にもわからない。しかし、誰もが使える“データをためる基盤”をつくれば、次の世代の力になると信じています」と内山氏は語る。
国産SFAの新興企業として、そしてAI時代の営業基盤を再設計する挑戦者として、SALES GOは日本企業の生産性改革を牽引する存在を目指す。データが自然に蓄積され、合理的な意思決定があたり前になる未来。その社会的インパクトは、SFAの枠を超え、日本の働き方と企業文化を大きく変えていく可能性を秘めている。