代替肉メーカー対決!大塚食品 vs. 不二製油
人口増加による将来的なタンパク質不足、蓄肉を生産する際の環境負荷など、さまざまな課題を背景に、植物原料の「代替肉」が注目されている。新ブランドを立ち上げた大塚食品、この分野の先駆者である不二製油の取り組みを見る。
タンパク質クライシスに挑む、代替肉メーカー2社
ヒトの体を形づくる重要な栄養素・タンパク質は、体内では生成できないため、食物などを通して供給しなければならない。だからこそ、国の食糧事情は人々の生命維持に直結するのだが、2050年には世界人口が97億人に達するとも予想され、将来的な世界の食糧事情の悪化とタンパク質不足への懸念が高まっている。一方で、重要なタンパク源である蓄肉の生産には大量の水と穀物が必要で、環境負荷が大きいことも問題視されるようになった。
そうした課題の解決策として期待されているのが、植物を原料とした代替肉だ。
米国では、2009年設立のベンチャー「ビヨンドミート」が開発したエンドウ豆ベースのハンバーガー用パテが急速に普及、同社は昨年(2019年)、ナスダック上場も果たした。また、2011年設立のバイオベンチャー「インポッシブルフーズ」は、大豆などのタンパク質を分子レベルで研究、生成した酵母に基づく代替肉を大手ハンバーガーチェーンなどに卸しており、ネスレ系など食品大手の参入もさかんになっている。
代替肉がもはや普通の選択肢となった米国に比べて、日本ではまだ注目度は高くないが、2018年には大塚食品が大豆ベースの代替肉ハンバーガー「ゼロミート」を発売するなど、代替肉市場は動き出している。ゼロミートは、デミグラスソース付きのタイプとソーセージタイプの2種類が市販されており、今年(2020年)3月からは、食肉大手のスターゼンとともに業務用の発売も始まった。
大塚食品は、以前にも大豆ベースの代替肉商品を手がけていたが、「リバース・エンジニアリング」によって本物の肉の食感や風味などをあらためて科学的に研究、オレイン酸やリノール酸などの成分も、本物の肉とほぼ同等にしているという。
だが、実は日本には、世界に先駆けて代替肉を手がけてきたメーカーがある。業務用チョコレートなどで世界シェア3位を誇る油脂大手、不二製油だ。1950年代から大豆原料の食品素材を開発、1957年には「大豆ミート」製品を発売しており、「粒状大豆タンパク」、「粒子状大豆タンパク」など60種類もの大豆ミート素材を食品メーカーなどの業務用として提供する。
現在は、インポッシブルフーズ同様、分子レベルで肉の組成を分析して原料の配合や温度設定などを調整しており、肉の種類に合わせて食感も変えている。健康志向の高まりから大豆タンパクが注目され、市場が拡大していることもあって、泉佐野市の工場がフル稼働状態であるため、今年、千葉県の保有地内に新工場を建設、大豆ミートの生産能力を増強する。
2018年に119億ドルだった世界の代替肉市場は、2025年には212億ドルまで拡大するとの予測もある。代替肉は、もはやブームの類いではなく、食糧難やタンパク質クライシスを解決する現実的な解決策となりつつある。日本企業が果たしうる役割も大きくなりそうだ。
プロジェクト概要
大塚食品(大塚ホールディングスのグループ会社)
設立 | 1955年 |
---|---|
本社 | 大阪市中央区 |
代表 | 牧瀬 篤正( 代表取締役社長) |
資本金 | 10億円 |
従業員数 | 461名(2018年12月) |
事業内容 | 食品・飲料の製造・販売 及び輸入販売 |
関係会社 | 大塚ホールディングス(持株会社) 大塚製薬、大鵬薬品工業、アース製薬など国内33 社 アジア/アラブ/オセアニア41社、北米・中南米22社、 欧州18社 |
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