ありたき社会で未来変革 『令和時代の日本人』ほか注目の三冊

次世代リーダーの育成を願って梅津彰一氏(ユーエス・コーポレーション社長)らが中心となって、フォーラム21が設立され、1999年からは「梅下村塾」と命名された。昭和から平成へという時代の転換期に産声を上げた同機関は今や、リーダーたちの一大ネットワークに成長。組織から参加する中堅幹部は毎年、分担して執筆に取り組み、自らの学びを消化し世に問う。本書は令和時代の幕開けに刊行された32期生の力作だ。その知的奔走の足跡は時代の要請を反映している。

解決への道は「自分ごと化」

旧い価値観に凝り固まった「粘土層管理職」と呼ばれ、改革の妨げと位置づけられがちな32期生世代。複雑化する社会課題に対峙すべく、膨大な資料を読み込み、有識者の講演を数多く聞いた32期生は、指導者人から「一人称で話して欲しい」との課題に直面する。いかに高邁な理想も自信の体験や立場に紐付けて語らなければ、内実を伴った言葉としては響かない。「自分ごと化」の対象領域を拡大することで、本来「他人ごと」であった社会課題にも当事者意識の範囲を拡大することができたという(12ページ)。情報化の反面、あらゆる物事を傍観視して捉えがちな現代、この変化は世代を問わず、令和時代を生きる私たちに共通して求められる姿勢だろう。

3つの「ありたき社会」

本書で掲げられる「ありたき社会」は3つある(15ページ)。

第1に「人の活躍の挿話が膨らみ続ける社会」、第2に「社会や人としての豊かさの総和が広がり続ける社会」、第3に「日本の価値の総和が高まり続ける社会」。そしてその根幹には「つながる力」の欠如が共通するという。

本書では、こうして全体像を描いたうえで、具体的に社会(家族)・経済(イノベーション・成長)・政治(安全保障)の3つの側面で起こしうる変化を考究している。とりわけ、世界的な社会課題に当事者意識をもって臨むには、自分たちのルーツである「日本人の心」=和魂を呼び覚ますことで、「日本型オーナーシップ人材」が育成されることに期待を寄せる(164ページ)。

本書を通じて開示される梅下村塾の取り組みは、事業構想にも多く通じるところがある。「自分ごと化」は、構想を描く主体の重要性を述べており、「つながる力」は、社会に散在する人やモノを経営資源として組み合わせ、社会の一翼を担う独自の構想に昇華させる力と言えよう。


フォーラム21は、日本を牽引する次世代リーダーの交流育成を目的に、1987年、真藤恒、小林陽太郎、梅津昇一の三氏が中心となって設立された異業種交流機関。1999年、今井隆が「平成の松下村塾たれ」との思いで、これを「梅下村塾」と命名した。これまで32期の修了生は1,071名に上り、企業社長や中央省庁事務次官など各界トップを多数輩出、日本を牽引するリーダーたちの巨大なネットワークを形成している。

 

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