ガーゼタオルから21世紀の新製品へ 創業110年超の老舗が開発

三重県津市で、明治41年(1908年)からの歴史を持つ『おぼろタオル』。社名にもある"おぼろタオル"は、創業から100年以上愛され続けるロングセラー商品。次の100年へ向け、新たな商品開発に注力する同社の、長く愛される商品開発の秘訣とは。

森田 壮(おぼろタオル取締役(営業・広報担当))

2つのロングセラー商品

『おぼろタオル』の歴史は、日本画家でもあり森田壮氏の曾祖父でもあった創業者の森田庄三郎が、明治41年(1908年)の当時、"無地で味気ないタオルに柄を入れられないか"という発想から、タオルに柄を付ける特殊な技法を開発したのが始まり。

〈おぼろ染め〉と呼ばれる特殊技法は、タオルのヨコ糸だけに柄を染める技術で、1908年に、日本で初めて同社が開発した。ヨコ糸だけに染められた柄は、タオルが乾いている時はおぼろげに見え、濡れると鮮明に浮き出す。その様子が、"おぼろ月夜が晴れる様子に似ている"ことにちなみ、〈おぼろ染め〉と名付けられた。

おぼろ染めのタオル(伊勢古式着物文様)

おぼろタオル取締役の森田壮氏は、「おぼろ染めタオルは、当時、珍しがられ、瞬く間に全国へ広まりました。〈おぼろ〉の名前があまりに有名になったため、1926年に、社名を『おぼろタオル』へ変更したのです」と話す。

同社にはもう1つ、1927年の発売から今に至るまで、当時の名前のまま販売しているロングセラー商品がある。日本初のガーゼタオル『おぼろガーゼタオル』だ。

おぼろガーゼタオル

このタオルが生まれたのは大正末期。当時、芸者や舞子さん達は、白粉(おしろい)を塗る時、医療用のガーゼを使い、落とす時にはお湯に濡らしたタオルを使用していた。創業者は花街を周り、そうした女性たちの不便さを聞き出し、片面ガーゼで片面タオルの、ガーゼタオルを開発した。

「ガーゼ地とタオル地を貼り合わせることは簡単にできますが、タオルを織機で織る時に、袋状にしてガーゼ面とタオル面がズレないよう工夫したのです」。

1927年、日本初の細糸による二重袋織ガーゼタオルの量産を開始。当時、"お化粧タオル"と呼ばれ、芸者や舞子さんなどをはじめ、世の多くの女性に受け入れられ、全国へ広まった。

100年後につながる、新たな商品を

バブル崩壊を経て、繊維産業が斜陽産業となる中、日本で3番目のタオル産地であった津市でも、多くのタオルメーカーが廃業、倒産を余儀なくされた。

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