2018年9月号

女性活躍推進 産官学連携研究会

女性活躍のカギを握るものとは 産官学連携研究会が始動

白河 桃子(少子化ジャーナリスト、作家)

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事業構想大学院大学 事業構想研究所では、女性活躍推進のための産官学連携研究会を開始した。研究会メンバーは、中島好美客員教授、青山商事、ポーラで、第1回は、ゲスト講師として白河桃子氏(少子化ジャーナリスト、作家)を招聘した。

白河 桃子(少子化ジャーナリスト、作家)

女性活躍のカギを握る
男性の働き方

少子高齢化による経営への影響が現実のものとなり始めた昨今、「女性の活躍」ということばを耳にする機会が増えた。女性活躍や働き方改革などをテーマに多くの企業を取材してきたジャーナリストの白河桃子氏は、その現状を捉えて思いを吐露する。「女性のことばかりあれこれ言うのはもうやめましょうよ。変わらなければならないのは男性のほうなのですから。女性が活躍するカギは男性にあるのです」。

メディアや企業は「どうすれば女性が活躍できるのか」をしきりに論じるが、白河氏は「重要なのは『How』ではなく『Why』だ」と言い、こう疑問を投げかける。「子どもの教育費の貯蓄をしたい、将来への財政不安があるなど、女性が働きたい理由はいろいろあります。では、なぜ今まで働かなかったのでしょうか」と。

そこに深く関わるのが「男性」、すなわち夫だ。夫が勤務する会社はどのような働き方をさせるのかということは女性が働くうえで非常に重要である。どれくらい子育てや家事への参加が見込めるのかによって、女性が働ける時間、どういう働き方ができるのかといったことが決まる。女性活躍は女性の問題ではなく、男性の問題であるというのは、こういうことなのである。

優しいだけでは
女性活躍は促進できない

1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性の総合職は増加したが、女性も男性と同じように「24時間戦う」ことを求められたため、ほとんどの女性が結婚や出産を機に退職した。その教訓から、現在は育休や時短勤務などの制度を充実させた、″女性に優しい企業″がたくさん登場している。しかし白河氏は「それが女性のキャリアを不利にしている」と話す。

図1 子どもの出生年別、第1子出産前後の妻の就業継続率

(備考)
1.国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」により作成。
2.対象は第1子が1歳以上15歳未満の初婚どうしの夫婦。第12回~第15回調査の夫婦を合わせて集計した(客体数 12,719)。
3.就業変化は、妻の妊娠判明時と子ども1歳時の従業上の地位の変化を見たもの。

 

今や産休や育休をとるのはあたりまえとなり、ずっと4割前後で推移していた「第1子出産前後の妻の継続就業率」が初めて53.1%(2010年~14年)に上昇した(図1)。ただし、正社員の就業継続率が69%であるのに対し、非正社員は25%しか残らない。では、正社員として働く女性が恵まれているのかというと、「そこにも壁がある」と白河氏。管理職に占める女性比率をみると、アメリカやヨーロッパが3~4割であるのに対し、日本は約1割と低い。「日本の女性が働いていないわけではありません、キャリア形成の機会がないということなのです」。

女性たちの悩みは、時短を利用している自分はこのままでは活躍できないということである。しかも給料は大幅に削減されてしまっている。だが通常業務に戻れば、遅くまで残業することになり、こどもを保育園に迎えにいけなくなる。結局、「子どもを育てながらの長時間労働は無理」ということになり、キャリアをあきらめざるをえない。「このように、女性に優しい制度を充実させただけでは女性の活躍促進にはなりません。女性が抱える問題を直視し、正面から取り組むフェアネスの高い社会環境が求められています」。

企業に求められる
「男性両立支援」

「フェアネスの高い社会環境」とはどういった環境なのだろうか。白河氏は、「その環境を作るのが、男女を対象にした『働き方改革』です」と話す。

具体的には、①評価や報酬を変えて長時間労働から脱却する。②在宅やフレックス制、起業や副業、兼業などで柔軟な働き方を可能にする。③労働時間の長さで評価するのではなく、時間あたりの成果で評価する。

「柔軟な働き方と労働時間の改革によって、育休復帰や時短復帰が早まった例をたくさん見てきました。最終的に、性差やこどもの有り無しに関係なく、本人が選べる働き方ができることが理想だと思います」と言う白河氏は、これから企業が取り組むべきことは「男性の両立支援」であると言う。

女性支援に力を入れてきた資生堂が「子育て中の女性の活躍」を求めた「資生堂ショック」は、育休や時短をとる制約人材をカバーする同僚の負担が限界に達したからだ。白河氏は、「育児中の女性も夜のシフトに入れませんかと丁寧に声をかけて行った。この問題は、パパを雇う経営者も育児のコストを負担せよと投げかけた」と指摘し、対照的な事例として、こどもができた男性職員に2年間の育児参加計画書の提出を義務づけた三重県を挙げた。「計画書はこどもができたら男性も働き方が変わることを可視化して家庭内ジェンダーは平等であるべきだという機運を醸成します。そうなってはじめてフェアネスな働き方が実現するのです」。

長時間労働の制限で
「正のサイクル」が回りだす

資生堂ショックによって、女性だけに家事育児が偏る社会の限界が明らかになった。ほかにも長時間労働による負の側面が次々と表面化している。電通社員の過労自死から社長が引責辞任し、長時間労働に制限を設ける動きが活発化した。アマゾンの日本での成功を支えたヤマト運輸は、過重労働やサービス残業が問題となり、サービス残業代を支払うことで業績を下方修正した。

白河氏は、「これらの事象が示唆しているのは、古い働き方が通用しなくなっているということ。昭和のレガシー企業は『長時間労働をすれば勝てる』というDNAを捨てなければ、これから起こるイノベーションには対応できません」と言う。市場のグローバル化が進み、海外からデジタルイノベーションの黒船が日本に押し寄せている。人口減少が進む日本では、人手不足の中、多様な労働力をひきつけられない企業は勝てない。

「長時間労働がなくなれば、男女とも働きやすくなり、生産性はアップし、女性の管理職比率も向上します。子育てやインプットに費やす時間的な余裕が生まれ、健康で幸せなプライベートを過ごせるようになり、その結果、さらに労働人口は増加していきます。多様な人々のアイデアの中からイノベーションが生まれ、企業の競争力が向上する。こうした″正のサイクル″をつくることが非常に重要です」。

女性活躍は女性だけの問題ではない。日本企業の国際競争力にも影響する重要事項なのである。

 

白河 桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家
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