「変人」とは何者か 未来を担う人材育成のフロンティア
「社会の中で『変人』をどう育て生かしていくか?」株式会社ドワンゴが運営するオンライン動画視聴サイト「ニコニコ動画」の生放送収録「対談『変人論』熊坂賢次×加藤順彦ポール」が8月下旬、都内で開催された。
そもそも「変人」とは何者であり、社会でどのような位置にあるのか。
社会学者の熊坂賢次氏(慶應義塾大学名誉教授)は、SFCの愛称で知られる湘南藤沢キャンパス(総合政策学部・環境情報学部)に創設時から関わり、現在は自身も事業家として会社経営に参画する。個々の学生が本来持っている可愛らしさ・カッコ良さといった人間的魅力が、就職活動などを節目に、ドレスコードや立ち居振る舞いで画一的な型に染まることを危惧する。「『学生の良いところを伸ばす』のがアカデミアの使命。彼らとは世代・価値観の違いから未知の側面も多いが、それらを面白がる才能が教員には不可欠」。当時自身のゼミで理屈抜きに挑戦した実践の数々を紹介した。
加藤順彦ポール氏は広告会社等二社設立に参画ののちシンガポールに移住し、自らハンズオンで日本人による起業支援に関わるエンジェル投資家である。在住経験も踏まえ、産業戦略と絡めた望ましい人材像を語った。シンガポールは天然資源に制約を持つ小国ゆえに「雇用・新産業を創出できる」ことが国の成長に資する重要な貢献であることを指摘。同じことは日本にも当てはまり「現状・常識を変革できる人材こそ『変人』」と熱を込める。
真に変革を生む人材とは
当初、本企画は二氏の対談と銘打っていたが、急遽、熊坂研究室の二期生である松尾卓哉氏の参席を得、後半は三氏の座談会として進行した。
松尾氏は慶應義塾大学卒業後、広告代理店等勤務を経て、2010年に株式会社17(じゅうなな)を設立、同社のクリエイティブディレクターとして、テレビCMやWEBなどで広告の企画制作をしている。「6・3・3制の12年間の初中等教育では"周りと同じことができること"を求められるが、実社会では"人と違うことができること"に価値がある」と指摘する。これに熊坂氏が「新商品やサービスでロングテールに対比される『ヘッド』を見つけて獲ることが起業には必要」と応じ、師弟で議論を大いに盛り上げた。
三氏は日本にもここ数年「変人」を尊重する機運の高まりを肌で感じているという。各界でその芽を見出された「変人」が、今求められる新たな価値を形にすることが期待される。