防災はトップダウンからボトムアップに 「地区防災計画」の威力

東日本大震災の教訓から、地域コミュニティの防災力を強化するために創設された「地区防災計画制度」。各地でモデル事業がスタートして1年たち、さまざまな成果が表れてきた。計画づくりを成功に導くためのポイントとは何か。

災害時に力を発揮するコミュニティの「共助」

東日本大震災では、多くの市町村職員が被災して行政機能が麻痺し、消防などによる救助活動(公助)の限界が明らかになった。救われた命の多くは、自力での脱出(自助)、あるいは家族や近隣住民など災害現場にいた人によってなされた救助活動(共助)によってつながれた。

津波の危険が迫ったとき、小学生が日ごろの防災教育「津波てんでんこ」により自主的に避難し、その姿に地域の高齢者や大人も呼応、結果的に多くの命が救われた「釜石の奇跡」は、自助が共助に結びついた好例と言えるだろう。そうした幾多の事例から、非常時に自助・共助が大きな役割を果たすこと、それらを公助と連携させる重要性が強く認識された。

この教訓を踏まえて2013年6月の災害対策基本法改正で創設、2014年4月に施行された制度が、住民が立案して行政に提案する「地区防災計画」である。従来の国→都道府県→市町村へのトップダウン型であった防災計画に、地域特性や現況をよく知る住民主体のボトムアップ型を加え、地区の防災力を強化していこうとするものだ。14年度は全国15か所がモデル事業の対象地区に選定された(15年度には、新たに22か所が対象地区に選定された)。

地区防災計画作成への流れ

内閣府 地区防災計画ガイドラインより

地区防災計画が機能する条件

制度の創設に関わった地区防災計画学会会長代理の西澤雅道氏(内閣府大臣官房総務課企画調整官)は「地区防災計画は立案・策定して終わりではなく、それをきっかけにして信頼関係を築き、地域コミュニティの結束力を高めることが大事です」と言い、計画づくりで成果をあげる地域にはいくつかの共通点があると指摘する。

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