進むシェアリング 「交通の未来」を考える視点

これから「都市交通」のあり方は、どう変わるのか。大切なのは、全体の視点から、交通システムを考えることであり、「人」の移動(モビリティ)を、設計(デザイン)していくこと。それは、まちの創造性と持続性を育むことにもつながる。

中村 文彦(横浜国立大学 理事・副学長)

----今、さまざまな交通手段のシェアリングが注目を集めています。

中村:シェアリングについて、大切なのは、誰のためにやるのか、人の行動をどう変えたいのか、まちをどう変えたいのかという視点です。日本では、その議論が足りません。

例えば、カーシェアでは、クルマを減らすことが目的になってしまい、「人」を考える視点がない。マーケティングでは、新商品を開発するにあたり、ユーザーを考えることが基本です。まちづくりの主役は「人」。しかし、実際のまちづくりは、そうした視点に欠けています。

一貫した計画・実行が必要に

----海外では、どういったシェアリングの動きがあるのですか。

中村:今、日本でもサイクルシェアが広がっていますが、その先駆けとなったのは、フランスのリヨンです。日本の場合、シェアリングというと、「所有から利用へ」といった流れで考えがちですが、そもそもリヨンは、自転車の個人所有が少ないまちでした。

リヨンがサイクルシェアを導入した目的は、クルマを減らすだけでなく、自転車を普及させるためです。シェアリングによって、気軽に自転車に触れる機会をつくれば、結果的に、自転車の購入にもつながると考えたのです。

そして実際、自転車の所有率は上がりました。根底には、人の行動をどう変化させるか、それが社会にどう影響するかを考える思想があります。

----交通戦略の策定・実行を進めていくには、何が必要になりますか。

中村:日本には、サイクルシェア、カーシェアなど、個別の施策を普及させようと努力する人はいても、バスや電車、徒歩を含めて、全体を考えて計画する視点が不足しています。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り69%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。