子育てに関するニーズや社会環境は一昔前と大きく変化している。いかに正確にニーズを発見し、製品やサービスに反映するか――。保育施設のデザイン革新に取り組む、日建設計NADの手法に学ぶ。

東京インターナショナルスクールの学童教育では、表現の楽しさを学べるアリーナ型の空間を提案
子どもの成長を促す「場」の力
建築設計事務所大手の日建設計で、デザイン思考に基づいた「アクティビティデザイン」を通じて、空間やプロダクト、組織のデザインを行うNIKKEN ACTIVITY DESIGN lab(NAD)は、2013年の部署立ち上げ以来、すでに10ヵ所以上の保育所や学童保育のデザインに携わってきた。
そもそも、保育施設のデザインは長年の経験に基づくノウハウを蓄積した専門の設計者が手掛けることが多く、新しいアプローチへの探求が見過ごされてきた。しかし、オフィスデザインで仕事の能率や創造性が変化するように、子どもの生育にも効果的なデザインがあるのではないか――。そうしたNADの課題意識は、施設やサービスの差別化を求める民間保育所事業者らに支持されている。
NADチーフの塩浦政也氏は、従来型の保育施設のデザインにはいくつかの課題があると指摘する。
まず、“子ども”というデザインを提供する対象の捉えづらさだ。「保育施設の設計では、戦略やKPIの設定が非常に困難です。なぜなら園児自身から要望を聞き出すことができない上、テストの結果や合格率等のように効果を計測することも難しいからです」。その結果、大人が勝手に思い描く子どもが好きそうなかわいらしいパターン(パステルカラーや花柄、動物など)のデザインが溢れている。
また、子どもが怪我をするリスクを極力減らすために、“過保護”なデザインが増えていることも問題だ。机の角を丸くするといった安全対策が行き過ぎて、子どもの行動を縛るような施設が多くなっている。
残り68%
会員の方はここからログイン
バックナンバー